2021年の箱根駅伝でも、青山学院大学の原晋監督(53)の存在感は格別だった。往路で12位に終わった時は「ゲーム―オーバー」と力なく語ったが、復路では猛烈な巻き返しを見せて4位まで浮上。復路優勝を勝ち取り、「『絆大作戦』は200%成功させたかったが、150%成功したと思う。強い青学をみせられた」とホッとした表情を見せた。
そしてレース後には「箱根駅伝の東京ドーム発着構想」、「箱根駅伝の全国化」をぶち上げた。原監督が箱根後に“改革プラン”を発信するのはもはや恒例行事だ。
これまでにも、関東の大学に限られている箱根駅伝の全国化や、政府と連携しての「スポーツ特区」構想から、オリンピック選考方法の変更、ふるさと納税のようにアスリートを指定して税金を払うアスリート納税など提言は多岐にわたる。
学連に箱根駅伝を大きく変える気はない
しかし、箱根駅伝主催の関東学連は、全国化や特区構想などの提言を黙殺し続けている。この“冷戦状態”について、陸上界に詳しい記者はこう語る。
「実際問題として、関東学連は箱根駅伝のフォーマットを変える気はないでしょう。現状で膨大なお金を生み出すドル箱で、これをわざわざ大きく変える理由がないんです。今年から、レース当日に変更できる選手の数を4名から6名に変更しましたが、そのレベルのマイナーチェンジをしながら、伝統的なスタイルを継承していくのが既定路線。学連にしてみれば、何回か優勝しただけの監督に大会の形にまで口を出されたくない、というのが本音でしょうね」
一方の原監督は、100回の記念大会を目途に箱根駅伝を全国化して、より陸上界を盛り上げたいと考えている。とはいえ、構想はあくまでもイメージでディティールに欠け、出場校を増やした場合の具体的な姿を示せてはいない。
また、本当に実現したいのであれば監督会議などの場で決議を求めるなど、手順を踏んで正式に協議できるようにする必要がある。それだけの発言力や政治力を持ちながら、内側からの改革ではなくメディアに向けて発言することに止まっている。