箱根で勝つことを最優先目標にしてきた原監督だけに、今年の大会前に仙骨の疲労骨折が判明した神林勇太(22)に10区を任せようとしたというエピソードに周囲は驚いていた。
「原監督は選手との距離が近いと言われますが、実は相当ドライ。2年前の春には寮内のルールを破った4年生が4名退部したり、箱根で勝つことに寄与しない選手に対しては見切りが早いです。
神林は走力はもちろん、主将でもあったので大事にするのはわかります。でも『棄権してもいいから10区を任せる』という判断は原監督っぽくない。結果的に神林の方から辞退したことで事態は収束しましたが、選手がその判断をすること自体が酷だという声もあり、もしかすると原監督の中でも考え方が変化しているのかもしれません」(同前)
目的のためには関東学連との対立を恐れず、世論を味方につけて改革を迫る。過去には自民党の党大会にゲストとして参加したり、現役大臣との面談の経験もある。「政治に興味はない」と本人は否定しているが、傍から見れば政治家やスポーツ庁長官というキャリアプランは現実的だ。そうなれば、関東学連を飛び越えて、上から陸上界を改革していくことも可能になる。
批判されると脆い部分も?
一方で、打たれ弱い部分もある。
「自分がマウントを取って攻めている時は強いんですが、批判されて守勢に回ると意外と脆いところがあります。昨夏の甲子園中止に際して『なんとかして開催する方法を模索するべき』と発言しましたが、想像以上に世論の反発を受けて声高には主張しなくなりました。派手でマスコミ映えする提言の中には、元をたどれば誰かの受け売りなことも多い。そんな言葉の軽さや、大会直前までテレビに出演する姿勢について疑問を感じる“アンチ”もかなり増えた印象があります」(同前)
それでも、原監督は関東学連にボールを投げ続けるだろう。
原監督が主張するように、箱根駅伝は改革によってさらに盛り上がる余地があるのか、はたまた関東学連が考えるように、現在の形のままが望ましいのか。陸上界のためには、メディアを介した空中戦と黙殺という現在の形ではなく、実のある議論が必要だ。
陸上界の発展とファンのためにも、歩み寄ることはできないのだろうか。