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 また、改革の先に原監督の野心が見え隠れしているという声もある。

「青学は“駅伝っぽくない”手法や雰囲気で注目されましたが、実はどの大学よりも『箱根で勝つこと』にこだわっているのが原監督。青学の選手の中には、『大学にいる間は個人の記録を出すことは諦めている』と話す選手もいるほど。駅伝での圧倒的な成績と比べて卒業後にマラソンなどで大成した選手がいないことを気にしてはいますが、箱根で勝つことの優先度は全く揺るがない。それも全ては、優勝することで発言力を増し、学連を動かすためと言っていいでしょう」(同前)

ⒸJMPA

 原監督がそこまで箱根駅伝の変化を求めるのには理由がある。陸上界に吹いている追い風が、ずっと続くわけではないということだ。

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 現在の陸上界は、活況を呈している。男子100mで桐生祥秀(25)が10秒の壁を突破し、400mリレーではオリンピックや世界陸上でメダル常連となった。中長距離界は世界の壁が高いが、瀬古利彦(64)らが主導したマラソングランドチャンピオンシップの成功によって、大迫傑を始め、スター選手が誕生しつつある。男子1万mの相澤晃(23)、女子1万mの新谷仁美(32)、女子1500mの田中希実(21)たちの知名度も急上昇中だ。

 しかし、少子化の波は陸上界にとっても影響が大きい。とりわけ駅伝はどうしても人数が必要なので、部員の数やレベルを維持するには、陸上を魅力ある稼げる競技にする必要がある。「陸上を野球やサッカーのようなメジャー競技にしたい」というのは原監督の持論の1つでもある。

2021年の箱根駅伝を優勝した駒澤大学 ⒸJMPA

実はかなりの「お任せ」タイプ

 原監督は箱根駅伝4連覇を達成し「名将」の評価が定着しているが、陸上界での立ち位置は駒澤大の大八木弘明監督(62)や東海大の両角速監督(54)とは異なるという。原監督のパーソナリティをよく知る記者が、匿名を条件に説明する。

「原監督はかなり『お任せ』タイプなんです。駅伝に筋トレを導入した『青トレ』は、アディダスに紹介されたトレーナーの中野ジェームズ修一氏の手法ですし、日々の練習も不在のことが多いのでコーチや主務に任せています。

 むしろ原監督が力を発揮するのは、選手のモチベーションを上げ、能力を見極めて区間配置する場面。他大学も『原さんの勘ピューターにはかなわない』とお手上げ状態。レース中の声掛けで選手たちを乗せるのもうまい。実際にそれで優勝してきたのですが、近年有力な高校生のリクルーティングで苦戦しているのは『青学は箱根では強いけれど選手の地力を上げる力は弱い』という評価が広まってきたのも影響していますね」