柚木麻子さん原作のドラマ『ナイルパーチの女子会』(BSテレ東、毎週土曜21:00~)で丸尾翔子役を演じる山田真歩さんは、出版社勤務を辞めて27歳から俳優を志し、その翌年には主演で映画デビューを飾った異色のキャリアの持ち主だ。
2月公開の西川美和監督最新作『すばらしき世界』にも出演し、これまでも瀬々敬久(『64 ロクヨン』)、松居大悟(『バイプレイヤーズ』シリーズ)、吉田恵輔(『ヒメアノ~ル』)といった現代を代表するクリエイターから度々指名を受け、観る者の心に爪痕を残してきた。
そんな山田さんは俳優という天職とどのように向き合ってきたのだろうか。(全2回の2回目/前編を読む)
「歯磨き粉は粗塩」独特な山田家の習慣
「自分が何のために生きているのか。何を目標に進んでいけばいいのか。そもそも自分は何がやりたいのか……。今思えばそういう自分の“輪郭”を探す作業をしていたのが20代でした。それで大学在学中にドイツに行ってみたり、とりあえず社会人になろう、“大人”の仲間入りをしてみようと小さな出版社に就職して、編集者としていろんな本を作ったり。でも自分は芝居をしている時が一番イキイキしてるな、と気づいたのが27歳だったんです」
『ナイルパーチの女子会』では、「女友だち」がいない自分に引け目を感じ、「女子会」を楽しむ女に敵意を抱く主人公・栄利子(水川あさみ)が登場するが、山田さんは幼い時から俳優を目指し始めるまで、「他人と比べる」ことがまったくなかったそうだ。
「自分の夢に向き合うまでに右往左往した20代後半までが自分の“内側”の葛藤だとしたら、栄利子や翔子のように、女友だちの有無やフォロワー数といった、他者との比較の中で“外側”から自分を知っていくことも輪郭探しのひとつだと思うんです。でも私は本当に人と自分を比べることがなかったんです。
教師をしていた両親は『人は人、自分は自分』という考え方の人で、人と比べない姿勢はここからきていると思います。山田家では昔からご飯は白米でなく玄米。歯磨き粉は粗塩で、テレビは基本NGでした。私のお弁当箱を見た友だちから『ご飯が茶色い!』と驚かれたこともありますが、そういったことも含めて、家での習慣を恥ずかしいとか変だと思うことは一切なかったんです」