「コロナ解雇」が無効だとされたタクシー会社
これら4つの要件は、コロナ解雇では、どのように判断されるのでしょうか。
2020年4月、タクシー業を営む会社が、コロナによる売上減少、債務超過に陥ったとして、従業員の大半を整理解雇したという事案がありました。
解雇された労働者が、解雇の無効を訴えた手続きで、裁判所は「雇用調整助成金の活用によって、収支を大幅に改善させる余地があった」として、人員削減の必要性(要件1)を否定しました。また、雇用調整助成金の申請をしていないのは、解雇回避努力(要件2)を尽くしたとはいえないとも述べています。結論として、裁判所は、労働者への整理解雇は無効であると判断しました(センバ流通事件・仙台地決令和2年8月21日判例集未搭載)。
その他、どのような事情が4要件の判断に重要になるかについては、細かい話になりますので、詳しく知りたい方は、当事務所の弁護士が書いた書籍(『労働事件の基本と実務 紛争類型別手続と事件処理の流れ、書式』日本加除出版)などを参照ください。
以上のように、コロナ解雇においては、雇用調整助成金の申請・活用をしたかどうかという点が、非常に重要になると思います。もし、整理解雇を通告された場合には、雇用調整助成金の活用を検討したのかどうか、それでも整理解雇をしなければならない理由は何か、などを使用者に説明を求めるようにするべきです。
「退職届を書かせようとしてくる」という相談が増えた
上記の解説は、整理解雇を通告された場合の対処方法ですが、このコロナ禍において労働者から相談を受けていると、少々気になることがあります。
それは、最初に解雇であると言われたのに、使用者が退職届を書かせようとしてくるという事案が見受けられるということです。
実際にあった相談は、「コロナで業績が悪化しているから解雇だと言われ、退職届を渡されたのですが、書いてもいいのでしょうか?」というものであったり、「書いてもらえないと離職票の発行ができないなどと言われ、不本意ながら退職届を書いてしまったのだけど、今から取り消すことは出来ないでしょうか」というようなものでした。
このように、解雇なのに退職届を書かせるという問題は、コロナ禍の以前からありましたが、コロナ禍で急増したように思います。