文春オンライン

“最高ランクのホテルでも、部屋に押し入り強盗が…” 中国人“毒婦”の故郷で過ごした「緊迫の一夜」

『中国人「毒婦」の告白』#28

2021/02/11
note

 実は帰国前から気になっていたことがあった。それは、私が中国から帰国する前日の9月19日が控訴審判決の日だったからだ。

裁判は延期に

 結果はどうなったのか。

 帰国してすぐ新聞をひっくり返して見ても、インターネットを検索しても、関連する記事はどこにもない。詩織の弁護人に尋ねようとも考えたが、翌日、本人と面会する予定だったので、その時に聞くことにした。だから詩織が面会室に現れるや否や、私は「判決はどうなりましたか」と聞いた。すると詩織は心持ち明るい顔で「延期になりました」という。

ADVERTISEMENT

「えっ!延期とは?」

「弁護士さんが、義兄の何を情状酌量のための証人として訪日させたいと裁判所に申し入れて、それが認められたのです。今、弁護士さんが義兄と連絡を取っている筈です」

 なんと私が会ってきたばかりの何が証人として法廷に立つのだという。

 期日も07年11月21日午後3時、と決まっているという。

 しかし、パスポートも持っていず、さして裕福ともいえない何が本当に日本にやってくることが出来るのだろうか。

©iStock.com

 実際、何の来日には、さまざまな障害がある。

 ビザの問題、旅費の問題、来日期間中臨時雇いである何の職場の許可が得られるか。それより、なにより日本語も英語も話せず海外など出たこともない何が、たった一人で東京まで辿りつけるのかどうか。