一方で「勝ち組」となるMT乗りも
MT乗りはいまやメーカーからも見放され、ひとり陰気にボロボロのスポーツカーを乗り回している……のかと言えば、決してそんなことはない。むしろ現在は、これまでMTを乗り続けてきた人達にとって「おいしい思い」ができる条件が整っているのだ。
「5年前に新車でランサーエボリューションの最終型を450万円ほどで購入したのですが、2020年に売却したタイミングでは400万円の値がつきました」
スポーツカー愛好者の知人はそう語る。
損益を考えると、約4年間で50万円の損失であるから、実質的な負担は1ヶ月につき1万円程度である。彼は売却金を元手に、シビックタイプRを購入していた。シビックタイプRは先日受注受付が終了したモデルであり、中古車相場は高値で安定しているから、次回のリセールにも期待できる。
高騰し続けるMT車の買取価格
MTのスポーツモデルはこれまでもリセールバリュー(中古車としての価値)が高かったが、ここ2、3年はとくに高騰が顕著である。買取価格の上昇により、実質的な負担を抑えるばかりか、利益を出しているケースも少なくない。
6、7年前、中古車店を訪れた際、駐車場の隅に値札のないR32型GT-Rがあり、気になってスタッフに尋ねてみた。
オーナーがオークションで安く仕入れ、「投資だ投資」などといってそのまま自身で購入したが、あまり乗らないので店に置いているのだという。
現在、同型のGT-Rの価格は暴騰し、新車価格(430.5万~529万円)を上回ることも珍しくない。カーセンサーに掲載されている車両の平均価格を見ると482.3万円となっている。保管状態によっては、1000万円以上で取引されるケースすらある。見事に「投資」に成功したというわけだ。