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スポーツカーは乗り心地が悪い?

 それでもやはり、「スポーツカーって乗り心地も悪いし、普通の人が乗るようなものじゃないだろう」と考える向きが大多数かもしれない。しかしスポーツ系のモデルにも、「本気度」にグラデーションがある。

量販車種のスポーツモデルとして人気を集めるスイフトスポーツ(スズキ公式Webサイトより)

 量販車種のスポーツモデル、たとえばスイフトスポーツなどは普通のコンパクトカーとして支障なく利用できる。軽も選択肢に入れられるなら、先日フルモデルチェンジを迎え、新たにMTモデルを設定したN-ONEもいい。デザインもポップで受け入れやすく、スポーツ系にありがちな無骨さを感じさせない。

 投資価値としてはスポーツカーの「ガチ勢」には見劣りするが、たとえばそれが「最後のガソリンモデル」ともなればリセールバリューは跳ね上がるだろう。

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“新たに”MTモデルを設定したN-ONE(ホンダ公式Webサイトより) 

 最新車種なら安全面や利便性といったところもカバーできる。坂道発進をアシストする機能や、回転数を自動で合わせる機構によって、操作面の負担は軽くなるだろう。クルーズコントロールや各種自動ブレーキといった先進安全装備も珍しくなくなっているから、「MT車は最新機能を使えないのでは」と心配する必要もない。

MT免許の持つ価値

 2030年代に向け国内外の各メーカーが電動化に舵を切るなか、MT車の希少価値はますます上昇していくことが予想される。MT車の魅力を語るうえで、従来は趣味性ばかりが強調されてきたが、今後はその投資的価値にも目を向ける意義はあるのではないか。

 車は「移動手段」であると同時に「資産」でもある。資産形成の観点から考えたとき、10年で価値がほぼゼロになってしまうものに何百万円もつぎ込むというのは、あまりに非合理的である。多少操作が面倒でも、経年によって価値が低減しにくいMT車は、十分考慮に値する選択肢なのではないか。

 もちろん、アルファードやランドクルーザーなどATであってもリセールバリューが高い車は存在する。けれども選択肢を広げてみることで、より多くのリターンを期待できる方法、より確実性の高い方法が見つかるかもしれない。「AT限定で十分」と結論づけてしまえば、こうした選択肢を端から切り捨てることになる。

©iStock.com

 MTの操作ができることなど、何の自慢にもなりはしない。けれども今後、MT免許を取得することは、資産形成の選択肢を広げるうえで有効な手段となると考えられる。

 さらにMTを運転してみて、万が一その「趣味性」に目覚めようものなら、それこそ一石二鳥である。MT車を維持することで、趣味と投資を兼ねることができるのだから。

 AT限定とMT免許との差は、つまるところそのような「可能性」である。AT限定の場合よりも、得をするかもしれないし、運転を楽しめるかもしれない。3時間の教習時間と、2万~3万円の費用の差で、こういう可能性を手にしてみるのも悪くないはずだ。