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菅氏と東北新社との“深い関係”

 常日頃「趣味は孫」と公言してはばからない菅氏だが、永田町に一歩足を踏み入れると柔和な表情は一変する。菅氏が総務省という“天領”を持ち、総務大臣以上に人事権を恣(ほしいまま)にする一方で、父から授かった総務省人脈で出世を遂げてきたのが正剛氏ではなかったか。本社の部長と、総務省が認定する衛星基幹放送事業者「株式会社 囲碁将棋チャンネル」(東北新社の子会社)の取締役を30代から兼務している。

 菅氏と東北新社の深い関係を象徴する出来事があったのは、10年8月6日。ホテルオークラ東京で盛大なパーティが催された。

「囲碁・将棋チャンネルの開局20周年パーティが催され、菅氏が主賓の1人として招かれていました。実は、菅氏は12年に官房長官になってからも、人目を忍んで東北新社を訪れ、創業者の植村伴次郎さんの長男で当時の社長・徹さん(昨年逝去)に会っていました」(東北新社関係者)

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 同郷に生まれ、裸一貫で身を起こした植村伴次郎氏について、菅氏は「凄い人なんだよ。一代で築いてさぁ」と、しばしばその「自助」に対し、尊崇の念を口にしていたという。

国会で連日追及を受ける

「自助」「既得権益の打破」との矛盾

 目指すべき社会像の筆頭に「自助」を謳い、「既得権益の打破」が政治信条の菅氏。だが、政治力を駆使して無職の長男を公金で雇い、多数の総務官僚との接点を持たせた。現に総務省の吉田氏と湯本氏は、正剛氏との最初の接点は総務大臣秘書官時代、と「週刊文春」に書面で回答している。その後、よりによって総務省の許認可先への就職を許した。そして違法接待が起きた。

 谷脇氏ら総務省幹部は今後どうなるのか。

「懲戒処分を受ければ少なくとも1年間は昇格が不可能となります。この9月に61歳になる谷脇氏はすでに次官級なので、定年の62歳まで間はありますが、いずれにせよ懲戒処分を受ければ次官昇格の目はなくなる。無理やり『利害関係者だとの認識はなかったので厳重注意とする』などと軽い処分で済ませれば、『官邸の守護神』と言われた黒川弘務検事長の定年延長の時のように『贔屓の引き倒し』に見られかねない。今夏の事務次官就任が確定的だった谷脇氏以下、総務省人事は大幅な変更を余儀なくされました」(総務省関係者)

 菅氏の権力を背景にした長男の違法接待によって、官僚だけが処分を受け、行政に影響が出る。それでも、菅首相は「別人格」と頬かむりを続けるのか。