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資本主義と社会主義が混ざる都市
「わが元帥様がお導きになる社会主義のわが国。他人が羨むように輝かせよう、これ見よがしに」
北朝鮮レストランの女性従業員は、中国人を前にしてこう歌った。丹東の現実の姿を見れば、これほど虚しく響くものもない。
だが、そう簡単に北朝鮮崩壊論の類を唱えてよいものだろうか。
中朝国境はかなり密接だ。対岸と物々交換するなとの看板もあった。戦前の日本も、中国側からわたってくる抗日パルチザンの討伐に悩まされていた。
もし北朝鮮が崩壊すれば、すぐそこまで西側がやってくる。とすれば、鴨緑江を挟んで、中国は米国と対峙することになりかねない。中国にとって北朝鮮の崩壊はあってはならないことだ。
中国政府は9月28日、国連安保理の決議を受けて、
プロパガンダとイデオロギー、現実と虚構、本音と建前、資本主義と社会主義、政治と観光――。
これらがない混ぜになった、くらくらするような丹東の光景は、これからもしばらく続きそうである。安易な崩壊論や脅威論はさておき、まずはその姿を見ておくにしくはない。
写真=辻田真佐憲