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度を超えた申告でも補償される?

 しかし、「ドアパンチでムチ打ち」といった無茶な要求に対しても、補償はなされるのだろうか。

「もちろん保険会社の方でも、アジャスター(事故状況から損害を算定する専門家。保険会社によって、社内の一部門としている場合と、第三者機関に委託している場合とがある)の見解も踏まえつつ、あまりに考えられないような請求に対してはお断りする場合もありますね」

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 アジャスターには、車両の損害状況の確認する者のほか、治療費や治療内容など医療分野における整合性を確認する者など、それぞれに専門性がある。当然、「ドアパンでムチ打ち」といった請求が認められるはずもない。

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高級バッグをめぐる「不正請求」

 損害以上の補償額を引き出そうと苦心する者たちのなかには、王道である「ムチ打ち」以外の方法を駆使する者も少なくない。車両と搭乗者以外に対する保険も、狙い目とされることがあるようだ。

 保険会社が用意している特約のうちには、自動車事故の際に積載していた荷物にまで補償が及ぶものや、車を離れた場面でも適用できるものなど、広範な領域をカバーするものがある。このような付帯的な特約についての請求には、イレギュラーなものが多く、対応に困ることもあるという。

 とりわけ補償範囲が広いのが、日常生活全般において他者に与えた損害を補償する「個人賠償責任特約」である。子どもが店の商品を壊したり、飼い犬が他人に怪我を負わせたり、といった際にも補償が及ぶ。

「『先輩に持たされてたカバンをガードレールに引っかけちゃって、中も全部ダメにしちゃったから弁償したい』と言われ……壊れた物がことごとく高級ブランドだったので、数百万円の支払いを要求されたことがありました。送られてきた画像を見ると、傷がなんだか取って付けたみたいな感じで。留め具とか、交換できそうな部分にばかり傷が入っていました」

「いやマジ勘弁してくださいよ」

 あらかじめ特約の利用を前提に、自らブランド物に傷をつけ、保険金を詐取しようとした可能性もゼロとはいえない。事故という明確な契機がないため、請求が作為的なものであるかどうかについての判断がつきにくいわけだ。

「状況についての説明も二転三転して要領を得ず、後出しで『歩行者に蹴飛ばされた』とか、『自転車に踏まれた』とか。これはちょっと、というのが正直なところだったんですが、留め具部分の修理費のみをお支払いする形を提案しました。案の定、全額支払いを譲らず、最初は『いやマジ勘弁してくださいよ、マジ殺されるんで』みたいな感じだったのが、最終的には『お前名前覚えたかんな、どうなるかわかってんだろうな』と……」

 どれだけ切羽詰まっていたのだろう。彼の境遇を考えると、なにやら暗澹たる思いに囚われそうである。なんであれ、保険金詐取も脅迫も、立派な犯罪行為であることには変わりない。