偶然の不幸に対する不安に乗じて金を徴収するけれども、いざその不幸が起きたときには、十分にその埋め合わせをしてくれるわけではない……。保険会社に対してそのような思いを抱いている人は多い。

 その証拠に、ネット上には、「補償額を下げるために保険会社が用いる手口」や、「保険会社が嫌がる交渉術」といった情報が溢れ、あたかも保険業界が悪の巣窟であるかのように喧伝するサイトが多数ヒットする。

 方々から「敵性認定」を与えられる保険会社のなかで、もっとも直接的に憎悪の対象となるのが、保険金の支払いについて契約者と交渉を行うサービスセンター(SC)の担当者たちだ。

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 とりわけ自動車保険の領域では、「過失割合」が問題となるために、契約者の「落ち度」をめぐって話を進めていかなくてはならない。事故に遭い過敏になっている契約者に、間接的にでも「あなたにも責任がある」という事実を告げる際のストレスはどれほどのものだろう。

 前回に引き続き、SCの担当者から、契約者とのトラブルに満ちた業務の実情について聞いてみた。

「突撃予告」は日常茶飯事

 保険会社の内部でも、SCは「もっとも配属されたくない部署」として位置づけられている。

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 たとえ社内で定められた手続きに従っているだけであっても、契約者側が実際に憎悪を抱く対象となるのは担当者個人のケースがほとんどだ。メールのやり取りでは担当者のフルネームが記載され、支店の住所も当然公開されている。怒りに駆られた相手が直接乗り込んでくる可能性も、十分考えられるわけである。

 実際に、補償内容に納得できない契約者から、オフィスに乗り込むなどの強硬手段を示唆されることもしばしばだという。