事故状況を理解できない高齢ドライバー
「一方通行の細い道から、一時停止を挟んで大きめの道路に出るT字路付近での事故で……一方通行出口から見て、道路を挟んだ右手にガソリンスタンドがあって、そこから出てきた車と衝突した、というケースでした」
「契約者側は高齢の方で、『突然相手が飛び出して追突してきた』と言って、自身の過失はゼロだという風に主張するんですが……損傷箇所は側面だったので、明らかに追突ではなくて、むしろ一時停止義務のあったこちら側の過失割合が高くなってしまいました。『どうして相手の味方をするんだ、一生恨んでやるからな』と」
どうせなら、自身の過失についても覚えていてくれるといいのだが、大前提としての事故状況を理解できていないのであるから、そうもいかなそうである。
ブレーキとアクセルの踏み間違えも「車側の故障」と認識してしまうように、見落としていた車も、主観的な認識においては「存在していなかったはずのものが急に現れた」ということになるわけだ。
「無保険の事故相手」は保険会社にとっても難敵
保険会社の交渉相手は、もちろん契約者だけではない。
「任意保険に未加入の事故相手」は一般的にも恐怖の対象であるが、保険会社にとっても厄介な相手となることが多い。保険会社と相手方本人が直接交渉を行うことになるため、恨みを買いやすいのである。
「最初の方は、『保険に入ってないから払えないんですよね……』みたいに、申し訳なさそうだったり、困ったような調子だったりすることもあるんですが……具体的な額や過失割合を伝えると豹変して、突撃予告とか脅迫めいた言動をされることもしょっちゅうです」
そもそも、自分が事故を起こし、多額の賠償責任を負う可能性を現実的に考慮していれば、任意保険に加入する以外の選択肢はないだろう。未加入であるということは、自身が事故を起こすことを想定していないか、あるいは端から支払うつもりがないか、いずれかである可能性が高いと考えられる。
想定外の支払い請求に逆上し、担当者を逆恨みするというのは十分ありそうな話である。
任意保険未加入者による「踏み倒し」
任意保険未加入者との事故をめぐる理不尽な話として、「相手に支払い能力がないために、修理代が支払われず泣き寝入りせざるを得なかった」といった事例は後を絶たない。
なぜこのようなことが起きるかと言えば、「契約者の過失がない事故については、保険会社は交渉に介入できない」というルールに原因がある。たとえば信号で停止中に追突されるといった「もらい事故」においては、損害をめぐる交渉を自身で行う必要があるのだ。