監禁されて一人前?
通常、顧客対応は電話やメールを通して行われるが、収拾がつかなくなった「炎上案件」の場合には、契約者と直接面談がなされることもある。
面談がオープンな場所で実施できればいいが、必ずしもそういうケースばかりではなく、なかには命の危険を感じるような状況もあるという。
「この部署で上のポジションにいるのは大体、軟禁のような状況を経験したことがある人たちです。難しい案件は総合職が引き上げて交渉することになりますので、それだけ危険な状況に追いやられるケースも増えます。『払うと言うまで帰さない』と、丸一日拘束されるみたいなことは、上の人たちはみんな経験してますね」
自動車保険に加入する人間のなかには、カタギとは言えないような人物も当然存在している。相手によっては、相応の覚悟を決めて臨まなければならないケースもあるだろう。
「危険な案件の場合には、面談の前に警察に相談して、張り込んでもらうこともあります。あらかじめ時間を決めて、たとえば1時間帰ってこなかったら突入する、という形です。幸い、実際に突入までいったケースは身の回りにはないですが、警察の協力を仰ぐことは結構ありますね」
さながら囮捜査の囮役である。保険会社というと社会的ステータスの高い職業であるように思えるが、内部ではそのような切迫した世界が繰り広げられているわけである。
高齢ドライバーに過失を認めさせることは不可能?
保険会社と契約者との交渉においては、過失割合をめぐる諍いが日常茶飯事だ。事故で混乱しているなか、自分の過失をすんなり認められる者はそう多くないだろう。
説得することが難しい人間にはさまざまなタイプが考えられるが、とくに認知機能に衰えが見られるドライバーの場合、そもそもの状況を把握できておらず、交渉が平行線を辿ることも多いようだ。