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明確な異常はないけれど……

 ムチ打ちは、事故などの衝撃によって首がムチのようにしなることで生じる「外傷性頸部症候群」という症状である。頸椎捻挫は他覚的所見(客観的に把握できる症状)が得られにくいことが特徴で、痛みの原因を突き止めるためMRIやCTといった検査をしても、明確な異常が見られないケースも多い。

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 つまり「痛み」という患者の主観的感覚をもとに、ムチ打ちの診断が下されるため、「とにかく首が痛いと言っておけば医者の診断書が手に入る」とされるわけである。

 なお、「ムチ打ちの治療期間は西日本の方が長くなる傾向にある」という研究データも存在する。なんとも不思議な話である。

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繊細な首の持ち主たち

 ムチ打ちは、患者が痛みを訴え続ける限り治ったことを証明しえないがゆえに、通院回数や期間を引き延ばすうえでも有効な手段となる。延々と通院を続けることで、相手方の保険会社から支払われる慰謝料を増やしていけるのだ。

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「実際に痛みを覚えている方が大多数だと信じたいですが、『この事故状況で?』というケースもしばしばです。車にはぶつかった跡もないんだけど……っていうのはいつものことですね。狭い道での行き違いで、ミラー同士が軽く接触した程度の事故とか」

 車に目立った跡がなくとも、乗員がムチ打ちになるケースも考えられなくはない。ただ、低速で進んでいる状況で、接触面積がわずかしかない事故によってムチ打ちになるとは考えにくいだろう。もしかすると、実際にはそれなりのスピードが出ており、対向車とすれ違う直前に距離の近さに気づき、慌てて急ブレーキを踏んだということもありうるかもしれないが……。

「一番は、駐車場でのドアパンチですね。こちらの契約者側がぶつけた形だったんですが、相手方がたまたま車内にいたみたいで……治療費と慰謝料を請求されて驚きました」

 ドアパンチでムチ打ち。もしかすると、レスラーがドアごとタックルでも仕掛けてきたのかもしれない。世も末である。