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「ステーキ海鮮で7万円なんて序の口」バブルの味を忘れられない“50代官僚”の接待感覚とは?

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「キャリア官僚が逮捕されることはない」

「今回の違法接待問題が報じられたときは本当に驚きました。少なくとも2000年に“国家公務員倫理規定”ができて以降、目立った違法接待はそれほど見当たらないはずです」

 こう肩を落とすのは神戸学院大学の中野雅至教授だ。中野教授は1990年に旧労働省に入省、2003年に厚生労働省大臣官房国際課課長補佐を務めたのち、退職し、現在は大学で行政学を教えている。中野氏は山田内閣広報官や谷脇審議官らとほぼ同世代の56歳だ。

「私は1990年に労働省に入省しました。確かに当時は、先輩方が『X社に講演を頼まれちゃってさ』と言って、そそくさと接待や講演料のもらえる講演会に出て行く姿をよく見かけました。私が入省した当時は『キャリア官僚は接待などでいくら利益供与を受けても、逮捕されることはない』という謎の不文律がまことしやかに語られていたものです。

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 しかし1996年、のちに“岡光事件”と呼ばれる厚労事務次官の利益供与が大きな問題になったことで、徐々に官僚の意識が変わっていったのです」(同前)

※写真はイメージ ©️iStock.com

「ノーパンしゃぶしゃぶ」が転機に

 岡光事件とは、当時厚生労働事務次官だった岡光序治氏が特別養護老人ホームの補助金交付に便宜を図った見返りに、利益供与を受けたとされる汚職事件だ。その後、1998年には大蔵省職員が大手銀行から過剰な接待を受けていた「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」も発覚。これらの事件を契機にして2000年には公務員と民間関係者との関係について定めた国家公務員倫理法が施行された。

 同法の倫理規定では「国家公務員が、許認可等の相手方、補助金等の交付を受ける者など、国家公務員の職務と利害関係を有する者(利害関係者)から金銭・物品の贈与や接待を受けたりすることなどを禁止しているほか、割り勘の場合でも利害関係者と共にゴルフや旅行などを行うことを禁止」すると定められた。

「それまで接待を受けていた先輩方は『なぜ個人の内面の倫理まで規制するんだ』と猛反発していました。ですが、マスコミの報道も過熱していましたし、小さな不祥事が官僚人生の命取りになる可能性もあった。自然と『接待』を受けるのはやめておこうという空気が醸成されていったんです。