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「ステーキ海鮮で7万円なんて序の口」バブルの味を忘れられない“50代官僚”の接待感覚とは?

果物は送り返し、出されたケーキも食べなかった

 当時は、皆、過剰なくらい、『これは利害関係者との利益供与や接待に当たらないだろうか』と気にしていましたよ。同窓会ひとつとっても、『もし友人に利害関係者がいたらどうするのか』と私と同僚とで、真面目に議論したこともあります。私自身、業界団体の人からおいしそうなラ・フランスが家に届いたときは、即刻送り返しました。もちろん、夜に食事に誘われても絶対に行きませんでした。

 業界団体の人と、先方の会社で、話し合いをしたときのことです。話し合いの前にコーヒーとケーキが出てきたのです。この時私はもう話し合いのテーマが頭から抜けてしまうほど悩みました。コーヒーはまだいいとして、先方が買ったケーキを食べてしまったら、これは飲食費を負担してもらったことになるのではないだろうか……。そう考えたら、ケーキに手をつけることができませんでした(笑)」(同前)

 それぐらい、「当時は官僚はみんな過敏になっていた」という。中野氏が続ける。

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※写真はイメージ ©️iStock.com

倫理規定は形骸化したのか

「2000年に国家公務員倫理規程ができてから、官僚になった人たちは、こういう先輩たちの生真面目すぎるぐらいの『倫理観』を見てきて、彼ら自身もそれが身についている。研修でも倫理規定についてはまずみっちり教育されます。今の50代以下の官僚の意識は先輩世代らの頃と180度変化しているのです。

 日本の行政や官僚制の強味は、業界や政界と上手く意思疎通することであり、それが経済成長の一因になったという指摘もありますが、残念なことに日本では、官業が『うまく意思疎通する』ための潤滑油として接待が機能してきてしまったという背景があります。

 しかし、2000年以降、時代は変わったはずでした。わずか数万円の接待や利益供与を受けただけで、数千万円規模の退職金を棒に振る可能性が出てきたわけです。接待に招かれて、いくら高級な『ステーキ』や『海鮮料理』を食べさせてもらったとしても、普通に発覚した後のことを考えれば、正直いいことはまるでないんです。そんなことはあのバブルの頃の『官僚バッシング』を経て、骨身に染みたと思っていたのに……。

 私が知る限りでは、官僚は接待に対して過剰なくらいピリピリしていた。でも、あれから20年経って、倫理規定も監視の目も、いまでは形骸化してしまったということなのでしょうか。本当に残念なことですし、彼らのやったことは、先輩方が積み上げてきた国民への信頼を踏みにじる行為だったと思います」

安倍前首相と山田内閣広報官 ©️AFLO

 25日には、鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループの秋田善祺元代表との会食に費用を負担せず同席したとして、農林水産省が幹部6人の懲戒処分を決定した。次々と発覚する官僚の不祥事。「蜜の味」の誘惑に流されず、膿を出しきるのはいつになるのだろうか。

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