1ページ目から読む
2/2ページ目

「“ホークスだと自分の入る場所はない”なんて思ったら終わりだよ」

「なんで育成なん?」

 朝9時から夕方4時頃まで共に練習し、食事も共にし、多くの時間を一緒に過ごす中で中田選手にそう聞かれたという黒瀬選手。改めて今までの自分のプロ生活を思い返しました。そして、これまでのことも中田選手にたくさん話を聞いてもらったと言います。

「“ホークスだと自分の入る場所はない”なんて思ったら終わりだよ。この自主トレで本当に良くなったから。今年絶対やれるから」

ADVERTISEMENT

 自分の弱さも取っ払って背中を押してくれた中田選手は、黒瀬選手のヒーローそのものでした。その言葉がどれだけ励みになっていることでしょう。きっとどんな逆境でも這い上がっていけるはずです。中田選手との自主トレを振り返る黒瀬選手の生き生きした姿から、そう思わずにはいられませんでした。

 また、キャンプ中に支えてくれたチームの先輩もいました。それは、調整のためB組スタートとなっていた明石健志選手でした。明石選手は中田選手とも黒瀬選手とも体格もタイプも違いますが、力感なく遠くに飛ばす力を持っています。「健志さんは細身なのに飛ばしてて、自分はデカいのに力を伝えきれてない……」と感じ、明石選手からも貪欲に学びました。明石選手は「翔は何って言ってたの?」と聞いてくれて、それを噛み砕きながら練習に付き合ってくれたそうです。素晴らしい先輩からのサポートと共に、有意義な時間を過ごしていました。

“一人一人がパズルのピースで、それぞれがチームというパズルにハマるピースになる”

 昨季中、明石選手にこのような言葉を掛けられたという黒瀬選手。まず2軍のレギュラーになるのも大変なホークスで、ファームで結果を残して支配下登録され、1軍に昇格してそこで活躍する……というプロセスを考えると本当に気の遠くなるような壁を感じることもあると思います。見ている私たちも「あの選手はホークスじゃなかったら……」などと考えてしまうこともありますし、実際に他球団へ移籍し、チャンスを掴んで1軍で活躍する元鷹選手の例もあります。

 しかし、中田選手の「“ホークスだと自分の入る場所はない”なんて思ったら終わり」という言葉や、「一人一人がパズルのピース」という明石選手の言葉のように、そこで戦う覚悟とfor the teamの精神が自らを心身ともに成長させ、チャンスを手繰り寄せるのではないかと感じました。これまでたくさんの試練を乗り越えて、黒瀬選手は今年もグラウンドに立っています。キャンプを終え、教育リーグ8試合を戦ったら、今月19日にはウエスタンリーグ開幕です。偉大な先輩たちに背中を押され、気持ち新たに前を向く黒瀬選手に期待せずにはいられません。競争は激しいですが、まずは2軍のレギュラーを勝ち取り、師匠たちにも結果で恩返しできる飛躍の1年になりますように。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ウィンターリーグ2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/43784 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。