「精神的な限界を感じて、寝ちゃいました」
「首を落として、血を抜いて、そのあと肩を落として、手首、肘をバラして、もう片方の肩を落として、手首、肘とバラして……。足に取りかかる前に、精神的な限界を感じて、寝ちゃいました」
「……眠れたの?」
「寝れました。倒れるように寝てました。それで朝に起きて、腐臭を少しでも防ぐために、早くしないと、と思って浴室に行って、『うわーーーっ』となったんですけど……」
この驚愕の気持ちを口にするとき、白石は肩を落とし、大きく息を吐いた。
「前の日、浴槽に水を張って、大量の入浴剤を入れて、そこに全部浮かべてたんですね。でも、昨日よりも臭いがひどくなった気がして……。だけどこのままやらないと、もっとひどくなると思って……」
続いて実行した手順をふたたび説明する。
「胴体を浴槽から出して、足首、膝、太ももの付け根の順で切っていきました。今日中にやらないと、と思って、取りかかりました」
そう話す白石は両腕を胸の前で組み、目を瞑っている。
「で、大きい部分をバラして、関節ごとのバラしが終わったら、皮を切ったり、骨から肉を外す作業をやったんです」
正直、耳にしていて嫌悪感を覚える内容だ。だが私は聞く。
「やっぱり、忘れられない状況だった?」
「いやあ、よく憶えてますね。いま思えば、臭いとか、(殺害、解体した)9人が9人とも、全部違うんですよ。最初のとき、すごい臭いがすると思ってましたけど、他の人をバラしてみて、あれは全然臭くなかったんだって気付きました」
おぞましい解体を振り返った直後に発した一言は…
そこで刑務官から、面会の残り時間が5分だと知らされた。
「じゃあ、今日は事件の話はここまでで……」
そう制して、次回の面会日を打ち合わせている私に、白石は切り出す。
「あ、小野さん、次回の差し入れ、やっぱり深キョンじゃなくて、前回のとは違う橋本環奈のやつ(写真集)でもいいですか? 深キョンはその次ってことで……」
私は頷き、それを粛々とメモに書き留める。
おぞましい解体の内容を振り返った直後に、こうした己の欲求をすぐに口にできる。そこにこそ彼の本質が表れているのではないか。胸の内にはそう書き残した。
【前編を読む】《獄中面会》「自分にとって都合のいい相手でした」白石死刑囚が明かす一人目の女性を殺めた“身勝手な理由”
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