「でも、おカネ欲しいし…」
「それで、彼女が戻ってくるのを部屋で待つ間、僕は(遺体)解体の方法を、改めて調べてましたね」
「でも、いざ実行する段階になると、殺害や解体っていうことに躊躇はなかった?」
私が質問を挟むと、彼は事件を振り返る際の癖で、目を瞑って言う。
「めちゃくちゃ悩みました。初めてだし、思いついて実行まで5日間くらい考えました。いやあ、すげえ迷いましたね。どうしよう、って……。でも、おカネ欲しいし、実家(住まい)で、借金まみれで、父に仕事探せ、借金返せ、早く自立しろ、と言われてて、それがすごく嫌だったんですね。だけど、まともに働く気がなくて……。彼女はヒモになれそう(な相手)だったんだけど、いいツボが重なったんで……」
「ツボ?」
「(部屋を借りる)頭金を払ってくれたし、(不動産業者への)見せ金を貸してくれたでしょ。この状況をどうしても手放したくないと思ったんですよね……」
これもすでに記したことだが、Aさんに彼氏がいると感じていた白石は、彼女の翻意を恐れていた。いずれ貸したカネを返せと言われるくらいなら、と殺害を決めたのである。
遺体解体時の強烈な心理的抵抗
室内で“計画通り”に、Aさんを殺害した白石は、すぐに次の行動に出ている。
「まず死亡を確認するため体に触ると、冷たくなっていて、心臓が止まっていました。そこで、首についているロープを切って、解体のために浴室まで引きずって行ったんです。(殺害して)放っておくとマズイと思ってました。調べてたなかに、死体はすぐに腐り始めるとあったので……」
「Aさんは裸の状態だったの?」
「いや、ぶら下げたとき(殺害時)に服を着せてます。下着も。ズボンを穿いてました」
心理的な抵抗はあったが、すぐに事前に用意していた刃物を使い、解体に取りかかったという。
「まずは血抜きのために首を落とすんですけど、うつぶせの姿勢で、浴槽の縁にみぞおち部分を載せ、体は外でみぞおちから上が浴槽内という状態でした。もちろん、抵抗はありました。とくに一人目に関しては。包丁を相手の首のうなじの部分につけて、引いたときに……コーラを振って開けるとモワモワと出てくるじゃないですか、そんな感じで血が出てきたんですよ。蛇口を上に向けて水を出したように。その瞬間に、頭痛がしました。でも、殺したからには、やらなきゃならないと決めてましたから。ただ、ウワッとなって……。映像(ママ)とか臭いがすごいんですよ。それでも、やらないと捕まると思って……」
それから白石は解体の手順をひとつひとつ、落ち着いた口調で説明する。