神奈川県座間市のアパートの一室で、9人の女性を殺害・解体した殺人犯、白石隆浩の死刑判決が2021年1月5日に確定した。そんな男の素顔に迫ろうと、獄中の白石被告のもとを何度も面会に訪れたのがノンフィクションライターの小野一光氏だ。

 ここでは同氏の著書『冷酷 座間9人殺害事件』(幻冬舎)を引用。当時を振り返りながら述懐する殺害の様子は、このうえなく猟奇的でおぞましい――。いったい白石死刑囚は獄中で何を語ったのだろうか。(全2回の2回目/前編を読む)

※本稿にはショッキングな表現が多出します。ご注意下さい。

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殺害実行まで悩んだのは5日間

「いやあ、深キョンはマジ凄いですね。顔とかは橋本環奈もいいんですけど、カラダはもう、全然深キョンのほうが良かった」

 8月26日の9回目の面会。白石は前回差し入れた、深田恭子の最新写真集についての感想から話を始めた。その流れで、次回以降の差し入れに、彼女のほかの写真集を加えることが決まる。

 ちなみにこの日、私が差し入れたのは古書店で求めた美術展覧会の図録だ。『カンヴァスに描かれた女性たち』という、ポーランド・ワルシャワのヨハネ・パウロII世美術館所蔵の人物画が収録されている冊子。まあ、美人画が多いので喜ばれるだろうとの目論見で選んだものである。

「じゃあ、今日もそろそろ事件の話題をさせてもらうね」

「はい、どうぞ」

 そのようにして切り替えた次の話題は、最初の殺人について。私はまず殺害の時間帯を尋ねる。

白石隆浩死刑囚 ©️文藝春秋

「殺害は夜です。昼にいろいろやらせたんですね。家族に手紙を書かせたりとか……。捜さないでくださいっていう内容のもの。自分が望んで失踪するので、捜さないでくださいっていう書式がネット上にあって、それをそのまま当日の昼までに書かせました」

ネットで調べた「犯行が発覚しない方法」

 白石によれば、犯行が発覚しない方法は、すべてネットで調べたとのこと。

「これも昼にやらせたんですけど、総仕上げに携帯を捨てさせました。足取りが消えるように。江の島の海に捨てろと言って、当日の昼、彼女がひとりで捨てに行ってます。ただ、逮捕されてからわかったんですけど、彼女は携帯を捨てず、片瀬江ノ島駅のトイレ(*実際は別の場所の公衆トイレ)に隠してました」

 被害者のAさんは携帯電話を捨てずに、あとで回収しようと考えていたのだろう。その携帯電話は第三者によって発見されている。

「それから、うちに来る前に、職場を自分から辞めさせてます。聞いた話では、派遣で日雇いの作業をやっているということだったので、そこにもう辞めると伝えさせました」

 前回も話していたのだが、犯行前に家族や職場との繋がりを切らせることが必須だと、白石は考えていた。