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「一度原発で働いたヤツはやっぱり原発に帰ってくる」

 彼のみならず、旅館の駐車場に停めてある作業員の車は、次第に高級車へと代わっていった。現場作業を終え、Jヴィレッジに戻った際、タイベックを脱ぎ捨てたあと、体育館でサーベイを受けるが、そこにあった貼り紙にも「3月に小名浜コールセンターにて、身体サーベイをされたおりにスクリーニングレベル超えで作業着と共に『車の鍵(メルセデスベンツ)』を回収された方を探しております。お心当たりのある方は、Jヴィレッジ総務班にお越し下さい」とあった。

「一度原発で働いたヤツは、なんだかんだいってもやっぱり原発に帰ってくるんだ。もう他では働けない。いまさら野丁場(のちょうば=一般的な建築現場)には戻れない」

 同じ現場に配属された下請けの親方の言葉は、原発作業員の心情を端的に表している。

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コツさえつかめば耐えられる原発での作業

 相変わらず使えない作業員ではあっても、次第に体が慣れてくると、1Fでの作業はうまみが多いと感じるようになった。暑さもさほど辛くない。装備を着込み、全面マスクを装着して現場に出ると、作業に夢中になってしまい暑さを感じる余裕がないのだ。

©iStock.com

 作業後、必ず汗だくになるので、想像以上の暑さであることは間違いないが、私のように不摂生な生活を送り、さほどタフではなく、肉体労働をほとんどしたことのない人間でもコツさえつかめば耐えられる。溶接を担当する作業員は、タイベックの上にもう1枚つなぎを着るのでしんどいだろうが、彼らも作業に没頭しているときはさほど暑さを感じないという。

 線量も想像以上に低いし、現場を出たくないという声を何度も聞いた。もちろん私は東芝系列の作業しか体験していないので、他の部署のことは分からない。

 1Fの復旧作業はあちこちから同時並行で進められていた。

 6つの原子炉は、1号機が米GE(ゼネラル・エレクトリック社)で、2・6号機がGE・東芝連合、3・5号機が東芝、4号機が日立製作所が主契約者である。暴走した1~4号機の炉心にはまだ手が付けられず、遮蔽された特別製トラックから遠隔操作ロボットを操り、専門部隊がメルトダウンした原子炉建屋の中の放射線量を調査・除染していた。汚泥や瓦礫を撤去し、道路などのインフラを整備したり、これ以上の放射性物質を拡散させないためのカバーを設置する準備も進んでいた(10月14日、1号機に設置)。絶え間なく冷却水を送り込み、汚染された水を浄化し、必要によっては敷地内のあちこちに設置されたタンクに移送する。私が就職した上会社は、この汚染水処理の一部を担当している。