またタイトルやサブタイトル、その他文字クレジット・テロップの書体やデザイン、出し方には、映画『犬神家の一族』(’76年)の市川崑監督、人物のUPや凝ったカメラアングルなどには『ウルトラマン』(’66年)や『帝都物語』(’88年)の実相寺昭雄監督へのオマージュが強く見られる。ただ見事なのは、先の『シン・ゴジラ』にも言えることだが、それらの要素を見事に一体化させていることだろう。一歩間違えばちぐはぐ、わやくちゃになってしまうそれらを、“庵野秀明作品”という、1990~2000年代を担う新しい世界観に昇華させたことが、庵野作品、樋口真嗣監督作品の最大の功績ではないだろうか?
俗っぽい表現を使えば“いいとこどり”の結晶がまさしく第1作『エヴァ』という作品であり、最大の魅力でもあった。だが、このことで旧『ゴジラ』や『ウルトラマン』シリーズを知らない世代にも、それと気づかせぬまま自然に味わわせ、次世代に橋渡ししたことで世界的評価を得たのだろう。
使徒は成田亨の「ウルトラシリーズ」の怪獣たちのDNAを継承
そして今(2021年)夏、ようやくこちらも待望の『シン・ウルトラマン』も公開が決まったが、使徒には『ウルトラQ』(’66年)、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』で怪獣及びメカニック・デザインを担当した成田亨のDNAが活きている。
『ウルトラQ』の怪獣バルンガやカネゴンのフォルム、『ウルトラマン』の怪獣ガヴァドンAや、異次元怪獣を体現したブルトン、『ウルトラセブン』のビラ星人やアンノン、ポール星人など、怪獣 = モンスターというよりは、一見したら前衛芸術か? と思わせる、トラウマ的に脳裏に焼き付くデザインが少なからずあった。それは成田の“彫刻家・画家”という肩書きに明白で、生粋の芸術家の作家性が反映された、真のアーティスト性がそこにはあった。だからこそ半世紀以上を経た今でも決して古びることなく語り継がれているのだ。
特にそれは非人間タイプの使徒に顕著で、第4使徒のシャムシエル、第5使徒のラミエル、第6使徒のガギエル、第12使徒のレリエル、第16使徒のアルミサエル等々にその面影を見出すことができる。
レリエルの体表に施された白黒のストライプ模様なども、『ウルトラマン』の三面怪人ダダや、『マイティジャック』(’68年)の敵組織・Qのメカなどによく見られる、成田亨が好んで用いる意匠のひとつだった。ここにも成田亨のDNAが新しい形で活きている。