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『ウルトラセブン』のマゼラン星人・マヤを彷彿とさせる美少年・渚カヲル

 それら“異形の者”でなく人類、それも“美少年”として登場したのが、人類名・渚カヲル(声・石田彰)こと第17使徒のタブリスだ。人類でありながら異能ゆえにエヴァ初号機のパイロットとなり、それでもなお自分の居場所を見つけられない主人公・碇シンジ(声・緒方恵美)と心を通わせながらも、自らの使命の終焉に気づき、望んで初号機の掌中で、笑顔を浮かべて逝ったカヲル君の最期は、『ウルトラセブン』第37話に登場した美少女宇宙人(この姿が本体か否かは語られず終い)のマゼラン星人マヤ(演・吉田ゆり)に被る。母星に裏切られ、恒星間弾道弾で地球もろとも抹殺されようとした彼女に、主人公のモロボシ・ダン(演・森次浩司)ことセブンは、宇宙人として共に地球で生きるよう彼女に手を差し伸べるが、宇宙人と地球人、どちらの世界にも自分の居場所を見出せないマヤは、自死を選ぶ……。

貞本義行によるマンガ『新世紀エヴァンゲリオン』9巻(角川コミックス・エース)

 庵野監督がどこまでこの作品を意識していたかは定かではないが、このエピソードの作者で名脚本家の市川森一が終生書き、訴え続けていたテーマ、“永遠に満たされることのない人間の孤独”が、監督の潜在意識に働きかけていたことは確かだろう。

 さまざまな名匠やクリエイターたちのDNAやメッセージを受け継ぎ、新生した劇場新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』への世間の期待値はあまりにも大きい。新型コロナ禍の渦中で、時代がまさに“新生”しつつある現在、昭和の偉大なるクリエイターたちの精神・心と魂を、庵野監督の作家性として新生させて未来へ繋ぎ、見事“新世紀”を築いて欲しい……と、一視聴者・観客として願ってやまない。