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「守備範囲が1ミリ伸びれば野球人生も伸びる」…ロッテの“ノックの名手”森脇浩司コーチがバットに込める想い

文春野球コラム ウィンターリーグ2021

2021/03/09
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 左右に。前後に。様々な状況を想定して打ち込んでいく。ゲームにおいて、いつどんな打球が飛んでくるか分からない。リズムよい打球もあれば、勢いの死んだ打球もある。3バウンドで捕球出来るような打球。もっと多い場合。少ない時。イレギュラー。フェンスに跳ね返っての打球。そんな多種多様なゴロを長さ92センチ、重さ520グラムのノックバットで再現する。森脇浩司野手総合兼内野守備コーチ。ノックの名手が今年より新たにマリーンズに加わった。ホークスなど様々な球団で守備力強化に貢献した男の手腕に期待が集まる。

ノックの名手・森脇浩司野手総合兼内野守備コーチ ©千葉ロッテマリーンズ

ノックは「最高のコミュニケーションツール」

 ノックについて森脇コーチは「最高のコミュニケーションツールだと思っている」と語る。だから心を込めて打ち込み、相手にその想いを伝えようとする。その作業を同コーチは会話と言う。

「色々な選手がいる。年齢も性格も様々。キャリアやこれまで歩んできた野球歴も違う。それでも私は一貫して同じ想いで打つようにしています。人がノックを打つわけですから。心がないとノックバットは持てないし、私は持たない。心を込めることが第一の条件。そうすればノックで会話が出来る」と森脇コーチは心の大事さを説く。

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 だからバットを握ると選手をじっと見つめる。どんな選手になって欲しいのか。どのような打球が苦手なのか。どんな打球をとれるように成長して欲しいのか。そのためにどんな打球を打つべきか。選手への想いを握っているノックバットに込めてボールに伝える。なかなか想い通りにいかないことはもちろんある。それで怒る事は絶対にしない。コーチは想い続けるだけ。「根気が必要。オレはこんなにやっているのになんで分からないのだ、出来ないのだなんて求めたら絶対にダメ。想い続けるだけ」と言う。

 近鉄、広島。ホークスでは南海からダイエーそしてソフトバンクへの移り変わりも経験した。さらに巨人、オリックス、中日。選手、コーチとして様々な球団で多くの人と出会い、学んできた経験もコーチ人生では大いに生きている。「絶えずアンテナは張るようにしている。人生は学びの連続」と語る。日々、気付き。日々、学び。日々、向上。自身が肝に銘じ、選手にも伝え続けている想いだ。

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