「イザというときは杉田副長官にお願いすることを考えている」
原子力規制委員会は「原子力災害対策指針」で30キロ圏の自治体に「地域防災計画」を策定するように義務付けたが、地方自治体は規制委員会が避難計画を再稼働の要件にしないことを“責任逃れ”と見て、不信感を表明した。政府は最終的に、発電所の事故対応(オンサイト対応)と避難対応(オフサイト対応)を分離させ、オンサイトは原子力規制庁が所掌し、オフサイトは内閣府原子力防災が調整することとした。この背景には、原子力規制委員会と規制庁が各省の総合調整を果たすのは難しいという判断があった。そこで内閣府原子力防災担当(大臣)を設置し、原子力防災の総合調整を担わせることにしたのである。
しかし、「実際問題として、あそこ(内閣府)では警察、消防、自衛隊を動員する執行力がないため、イザというときは杉田副長官にお願いすることを考えている」(政府幹部)のが実態である。安倍政権から菅義偉政権を通じて内閣官房副長官を務め、“危機管理の鬼”と言われる杉田和博官房副長官のことである。要するに、有事の際は法律通りには動かないだろうことを政府中枢が半ば認めているも同然なのである。
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政治家も官僚も「有事」からただひたすらに逃走する。コロナの混乱は10年前のフクシマとあまりに酷似している――。アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、船橋洋一氏による「日本の敗戦『フクシマ』と『コロナ』 走り出したら止まれない『この国の病理』」の全文は「文藝春秋 電子版」と「文藝春秋」2021年4月号でお読みいただけます。
日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」
【文藝春秋 目次】日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 船橋洋一/東京五輪、国民は望むのか 山口 香 有森裕子/<特集 十年後の東日本大震災>羽生結弦の十年
2021年4月号
2021年3月10日 発売
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