菅義偉首相は昨年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言した。昨年11月には、国会でも衆参両院で「気候非常事態宣言」が決議され、政府と国会が足並みを揃えて「脱炭素」に取り組むことになった。
だが、日本は世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」から「化石賞」を贈られるなど、地球温暖化対策に後ろ向きとみなされており、カーボンニュートラルの実現は容易ではない。
そこで「文藝春秋」では、環境大臣の小泉進次郎氏に、超党派議連の共同代表幹事として国会での「気候非常事態宣言」決議をリードした国民民主党国対委員長の古川元久氏、同議連の事務局長を務めた自民党衆院議員の古川禎久氏を交えて座談会を開催。カーボンニュートラルの実現に向けた今後の日本の針路をテーマに座談会を行った。
古川(元) 2050年までのカーボンニュートラル実現は極めて高い目標です。温室効果ガスを排出しない太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの普及は欠かせませんが、環境省は経産省などと比べて政府の中での立場が弱いところがありますから、大臣も苦労があるでしょう?
小泉 おっしゃる通り、環境省だけで声を上げても政府全体を動かすことはできません。そこで各省庁を集めた会議を官邸に設置する働きかけをしました。その結果が昨年12月に立ち上がった「国・地方脱炭素実現会議」です。環境省が官邸の会議を取り仕切ることは史上初めてのこと。これから国と地方が一体となって脱炭素に向けたロードマップを作っていきます。
風力か、地熱か
環境省は2030年に再生可能エネルギーの比率を40%超にすることを目指している。これは現在の2倍に当たる極めて高い目標だ。実現に向けては具体的にどの再エネを拡大していくべきなのか。小泉氏が挙げたのは風力発電である。
小泉 日本の再エネ発電比率は太陽光に偏っていて風力はごくわずかです。日中の太陽光に加えて、日の照らない時間に風力発電量を伸ばしていくことで、「再生可能エネルギー=不安定で高い」という固定観念を変えていきたい。ただ、こういう話をすると、「ミスター地熱」として知られる禎久先生から異論が出るかもしれませんが(笑)。