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「まだパスタはやってないよね」「カルボナーラは?」チロルチョコの新味はなぜぶっ飛んでいるのか

チロルチョコ株式会社・松尾裕二社長インタビュー #1

2021/03/14
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印象深い味は、全く売れなかった〈夏野菜〉

ーー年間の売り上げ上位は、やっぱり〈コーヒーヌガー〉といった定番が占めますか。

松尾 弊社の商品は季節ごとに入れ替えるものが多いので、どうしても年間ずっと販売しているものに集中しますね。そうなると、コンビニに置いてある〈ミルク〉が1位で、2位が〈コーヒーヌガー〉。3位が〈きなこもち〉ですけど、〈コーヒーヌガー〉とは僅差かな。

ーー短期間で販売を終えた商品で、松尾社長のなかで強烈な印象を残しているものはありますか?

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松尾 ほとんどの商品が短期間で販売を終わるんです。出して1~2カ月で次の商品に切り替えるので、継続させるということはほぼない。〈きなこもち〉も当初は2003年の秋冬シーズンに発売した季節商品だったんですけど、人気が出て販売を継続したら5カ月で約1700万個が売れたので定番になりました。でも、そういう特例は〈きなこもち〉くらい。

 そうしたなかで印象に残っているのは、2018年発売の「夏野菜チョコレート」という7個入りのアソートパックかな。〈トマト〉〈えだまめ〉〈とうもろこし〉の3種類のフレーバーを作って入れたんです。だけど、奇抜すぎて、まったく売れなかったです(笑)。

2018年発売の「夏野菜チョコレート」。「野菜を集めて人間の顔を描くジュゼッペ・アルチンボルドという、16世紀の有名な画家がいますよね。あんな感じで野菜を並べて、〈三つ山〉のパッケージに描かれた〈チロル坊や〉の横顔を再現しました」(松尾社長)(チロルチョコ株式会社提供)
2018年発売の「夏野菜チョコレート」より。左から〈トマト〉、〈とうもろこし〉、〈えだまめ〉(チロルチョコ株式会社提供)

ーー「夏野菜チョコレート」は仕方ないとしても、一部のファンには受けたトガったフレーバーはありそうですね。

松尾 すべての商品をマーケティング調査していないので、受けたのかどうかはわかりませんが、個人的には2018年に発売した「チロルのパン屋さん」の〈カレーパン〉はすごいなと思いましたね。

 なかにクルトンを入れてサクサク感を出して、実際のカレーパン特有のなんともいえない辛味を再現したんです。開発部から試作を出してもらって食べてみたら「まさにカレーパンだ!」と、ちょっと本気でビックリしましたね。

2018年発売の「チロルのパン屋さん」(チロルチョコ株式会社提供)
2018年発売の「チロルのパン屋さん」より。左から〈クロワッサン〉、〈クリームパン〉、〈カレーパン〉(チロルチョコ株式会社提供)

 けっこう前のめりになって売り出したのですが、色物として受け止められてしまったのか「1回食べればいいや」みたいな感じになってしまったようで、そんなに大きな話題にならず、そんなに売れたわけでもなく……それでも「夏野菜チョコレート」よりは売れましたけど(笑)。

 この〈カレーパン〉で、うちの再現度って本当にすごいんだなと強く思ったのは覚えていますね。