「いや、ほんとしぶといですよ、あの人だけは」。こう苦笑いするのは、ある自民党関係者だ。権謀術数が渦巻き、生き馬の目を抜くと言われる永田町で驚異的な“生命力”を保っているのは、元農林水産大臣の西川公也氏(78)その人だ。

「西川元農水相、幹事長特別参与に 自民」(4月14日付、時事通信)

「不祥事の西川公也氏、党務で復帰 自民幹事長特別参与」(同、産経新聞)

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 メディア各社が一斉に報じたのは西川氏の党務復帰の話題だった。西川氏といえば、東京地検特捜部が強制捜査に踏み切った鶏卵生産・販売大手「アキタフーズ」を巡る贈収賄事件で、「収賄側」に名前を連ねた1人だ。大臣在任中に500万円を受け取ったことが明らかになった、同じく農水大臣経験者で自民党衆院議員の吉川貴盛氏(70)は議員辞職に追い込まれ、西川氏も内閣官房参与を辞任していた。

かつても「政治とカネ」の問題で農水大臣を辞職した西川公也氏 ©AFLO

当初、自民党幹事長室は否定

 各社の報道によると、西川氏は、自民党内に新設された「幹事長特別参与」なる役職に就任したのだという。「幹事長」といえば、言うまでもなく、西川氏が所属する「志帥会(二階派)」を率いる二階俊博氏(82)のことを指す。

 役職自体は、「担当は特になく、報酬も支払われない」(同日付時事通信)とされる名誉職ではあるが、アキタフーズの一件に限らず、地元・栃木の木材加工会社からの違法献金疑惑(2012年)、国からの補助金交付を受けた製糖業界団体からの献金受領(2013年)など、たびたび「カネ」にまつわる不祥事を引き起こしてきた御仁だけに、温情ともいえる人事には、驚きの声が広がった。

 実は、筆者が西川氏の「党務復帰」の情報を入手したのは、3月初旬のことだった。

「最近、自民党内で新たに役職を得たという話です。その後ろ盾になったのが、西川氏の所属派閥『志帥会』の領袖である、二階俊博幹事長。二階氏の計らいで、幹事長付の『参与』の職を与えられたといいます」

 ある自民党関係者から、こんなインサイダー情報が飛び込んできたのだ。

 早速、事の真偽を確かめるために3月15日、文春オンライン編集部を通じて自民党幹事長室に西川氏の党務復帰について取材を申し入れたところ、「それはないですね。名称にかかわらず、党の役職には就いていません」との回答だった。結果的にこれは“虚偽答弁”だったことになる。