3、「様々な作品から主人公が出張してきているような」“脇役”たちの王道BL
本作では「脇役=他作品ではメインを張るキャラクター性を持つ登場人物」という構造があり、やはり一癖も二癖もあるキャラクターたちがあくまで「モブで居たい」主人公の周りでBL作品の王道的な展開を繰り広げる様子も面白い。
もちろん、主人公が学生のため、登場する脇役たちも「学生」がメインにはなる。しかし、幽霊・腐男子漫画家・記憶喪失・惚れた男の結婚式に出る男・女装男子なんかが登場するあたり、ある意味「BLならなんでもあり」の世界観。いうなれば、様々な作品から主人公が出張してきているようなものである。面白くないはずがない。
作者がBL漫画をかなり読み込んでいるので、作品内に登場するセリフ・回数自体は少ないキャラでも、その背景にあるストーリーを彷彿とさせる言葉選びが絶妙で、読み手の想像を掻き立ててくれる。また、あくまで漫画内では淡々とあるあるネタを並べながら皮肉交じりにコミカルな突っ込みを入れつつ、「でもみんな、こういうの好きでしょ」という要素も入れてくれている。腐女子として、重層的な作品の魅力と福利厚生の手厚さを感じずにはいられない。
BLの王道展開の面白さ、魅力をわかっている作者であるからこそ効いてくる主人公サイドのメタ視点での皮肉、王道から外したストーリーがあり、また絵柄やコマの使い方が一貫してライトにまとまっているからこそ、脇役の王道BLを描いても生々しい印象にはならず作品としてうまく纏まっている。バランス感覚に優れた作品と言えるのではないだろうか。
「ニッチな内輪ネタ」と表現方法
以上のような、BLジャンルの「内輪ネタ」のおもしろ要素をライトな切り口と絵柄・コマ割りで読みやすく表現している点こそが、腐女子である私の視点から見た漫画『絶対BL』の魅力である。
正直なところ、扱っているネタがかなりニッチであることは事実。腐女子以外の方が見る「実写ドラマ」でどのような味付けになっていくのかわからない。ただ、どういうかたちになるにせよ、読者としては主人公が報われて欲しいような気もするが、腐女子としては報われて欲しくない気もしている。
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