2月中旬の自民党本部。幹事長代行の野田聖子など、自民党幹事長室の主要メンバーらが集まり、幹事長・二階俊博の誕生日を祝う会合が開かれていた。時節柄ケーキなどの食べ物はなく質素なあつらえだったが、普段は寡黙な二階がこの日ばかりはご機嫌な表情で、出席者からのあいさつや問いかけに積極的に応じていたという。
会合の終盤、ある質問が二階に飛んだ。
「女性の首相誕生の可能性をどう見ているか」
二階の脇に“側近”よろしく陣取る野田聖子を横目に、二階は答えた。
「男とか女とか、そんなことはあまり関係ない。ただ、女性の首相が誕生したときに、それを支える体制が女性議員の側に整っているかだ」
野田聖子を支えようという人がいない
それまで努めて明るく振舞い、お祝いムードを演出していた野田だったが、二階の言葉を聞くと、凍った表情になったという。
さすがに政治経験を重ねた老練な二階の分析である。日本の政治史上、いまだ女性首相が誕生しない背景を「女性議員が女性議員を支えられないからだ」と喝破したのだ。
野田聖子は自他ともに認める、女性首相を目指す政治家の1人だ。しかし、過去2度出馬を目指した自民党総裁選では、出馬に必要な20人を集められたためしがなかった。
30代で郵政相として初入閣して以来、内閣府特命相、総務相などの閣僚を歴任し、党においても総務会長という党三役を務め、経歴や知名度に申し分はない。しかし、彼女を支えようという「集団」はいまだ存在せず、総裁選への出馬は実現していない。
「言いがかりをつけられた」稲田朋美との不仲
自民党には現在40人近い女性国会議員がおり、仮にこれをまとめることができれば、総裁選の立候補は容易だ。しかし、二階は名指ししたわけではないが、その指摘通り、女性議員をまとめられていないのが野田の現状だ。
野田が女性議員をまとめられていない象徴といえるのが稲田朋美との不仲だ。野田の前任の幹事長代行であり、野田と同じく女性首相を目指すことを口にして憚らない稲田朋美は、野田について「信用できない」とことあるごとに口外し、敵視している。
それは、稲田が主宰する女性議員グループ「女性議員飛躍の会」が、自民党本部の会議室の一つを専用部屋として使うことに対し、野田が異議を申し立てたことに端を発している。野田は「党内には女性局という正規の組織があるのだから」と主張していたようだが、稲田は「言いがかりをつけられた」と強く思っていて、このときの恨みを拭い去れないでいる。