1ページ目から読む
2/3ページ目

(この分だと、授業中にゲストの名前が出てこなくなる可能性もあるな。そんな失礼なことはできないな)

 危機感を抱いた私は、その頃からあるルーティンを行うようにした。ルーティンといってもそんなたいそうなことではなく、スタジオに入って収録が始まる前の1分くらいの間に、校長と私が立っているテーブルに貼ってある、ゲストの顔写真と名前を、本人の顔と確認しながら刷り込む、という、ただそれだけなのだが......。ちなみにこれは他の番組でもやっている、私の唯一のルーティンだ。この作業は私にとっては効果絶大で、少なくとも本番中に名前が出てこない、という惨状だけは避けることができていた。

©iStock.com

尋常ではなくヘコんだ“世界一受けたい授業事件”

 ところが2018年だっただろうか。『世界一受けたい授業』の収録の時のことだ。自分の中ではすっかりお馴染みになったルーティンで、その日のゲストの顔と名前を確認し、さあ今口もこれで大丈夫、と一種のおまじない効果を感じながら、本番に突入した。そして数分後、その日の1時間目の授業の最初の問題の時。

ADVERTISEMENT

「はーい、この問題わかる人?」

 私がゲストの皆さんに問いかける。

「はい!」と、Aというゲストが手を挙げる。

「はい、A君!」

「~だと思います」

「なるほど。はい、他?」

 今度はBというゲストが手を挙げる。

「はい、B君!」

「~じゃないかと思うんですが」

©iStock.com

 順調なやり取りが進んでいた。ところが、である。この直後、恐ろしい瞬間が訪れた。私の相方が手を挙げた。

 (あれ? こいつの名前なんだっけ?)

 なんと名前が出てこないのだ! 出会ってから早20年以上、毎日のように会っている相方の名前が出てこない!

 (そういえばコイツの名前、本番前に確認しなかったな)

「それはそうである。いくらルーティンで皆の名前を確認するとはいっても、相方の名前が出てこないかもしれない、などという想定はしておらず、一度も相方の名前を確認したことなどなかったのだ。