(この分だと、授業中にゲストの名前が出てこなくなる可能性もあるな。そんな失礼なことはできないな)
危機感を抱いた私は、その頃からあるルーティンを行うようにした。ルーティンといってもそんなたいそうなことではなく、スタジオに入って収録が始まる前の1分くらいの間に、校長と私が立っているテーブルに貼ってある、ゲストの顔写真と名前を、本人の顔と確認しながら刷り込む、という、ただそれだけなのだが......。ちなみにこれは他の番組でもやっている、私の唯一のルーティンだ。この作業は私にとっては効果絶大で、少なくとも本番中に名前が出てこない、という惨状だけは避けることができていた。
尋常ではなくヘコんだ“世界一受けたい授業事件”
ところが2018年だっただろうか。『世界一受けたい授業』の収録の時のことだ。自分の中ではすっかりお馴染みになったルーティンで、その日のゲストの顔と名前を確認し、さあ今口もこれで大丈夫、と一種のおまじない効果を感じながら、本番に突入した。そして数分後、その日の1時間目の授業の最初の問題の時。
「はーい、この問題わかる人?」
私がゲストの皆さんに問いかける。
「はい!」と、Aというゲストが手を挙げる。
「はい、A君!」
「~だと思います」
「なるほど。はい、他?」
今度はBというゲストが手を挙げる。
「はい、B君!」
「~じゃないかと思うんですが」
順調なやり取りが進んでいた。ところが、である。この直後、恐ろしい瞬間が訪れた。私の相方が手を挙げた。
(あれ? こいつの名前なんだっけ?)
なんと名前が出てこないのだ! 出会ってから早20年以上、毎日のように会っている相方の名前が出てこない!
(そういえばコイツの名前、本番前に確認しなかったな)
「それはそうである。いくらルーティンで皆の名前を確認するとはいっても、相方の名前が出てこないかもしれない、などという想定はしておらず、一度も相方の名前を確認したことなどなかったのだ。