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俊夫さんが買ってくれた靴をはいて
会見が終わった後、私のことをずっと取材している相澤さんが話しかけてきた。
「この前は、俊夫さんが見立ててくれた昔の服を着て会見に臨むと話していましたけど……」
そんな服、今の私に着られるはずがないじゃないの。何て気の利かないことを聞くんだろう。きっぱり答えてあげた。
「着てませんよ。代わりにほら、この靴。夫が20年前に買ってくれた靴です。これをはいてきました」
そんなことを言い返せるくらい、私は強くなった。本来の私に戻っただけかもしれないけど、私はますます強くなる。としくんの悔しさ、思いを晴らしてあげたい。だから強くなるしかない。
去年のあの日、私は生まれ変わったんや。だから今日は生まれ変わった私の1歳の誕生日や。……4日後には本当の誕生日が来て50歳の大台になるけどね。
この日の夜、自宅でささやかな誕生パーティを開いた。私の周りで支えてくれる人たちを招いて。ハッピーバースデー、新しい私! ……としくんは「あまり無理すんなよ」と心配しているかもしれんけど。