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支援の気持ちを示して下さる皆さんのおかげ

 いつもと同じようにとしくん(夫の俊夫さん)の祭壇の前を掃除する。「としくんの手記を公開してから今日で1年だよ。記者会見してくるよ」と話しかけながら。そう、私はきょう、手記公開と提訴から1年で記者会見する。私自身がテレビカメラの前で話をするなんて、1年前のあの頃はとても考えられなかった。

 どうして私は変わったんだろう。それは私に支援の気持ちを示して下さる皆さんのおかげだ。としくんの手記を公開して、どんな反応があるだろと怖くて仕方がなかったけれど、実際にはおびえることなんかなかった。SNSやお手紙で寄せられた共感の声。手記を掲載した週刊文春は53万部が完売。真相解明を求めるネット上の署名活動に寄せられた35万人の方の賛同。こんなに多くの方に理解してもらえるなんて、あの頃はとても想像できなかった。

週刊文春の最新号を買った赤木雅子さん(撮影・久保田徹さん)

 あれからちょうど1年となる今日、3月18日発売の週刊文春にも、私の記事が出ている。10年前の東日本大震災直後、としくんが職場から被災地の宮城県七ヶ浜町に派遣されて被災した人たちの支援にあたった。その跡をたどって3・11に合わせて旅をしてきたことが書かれている。会見の前にコンビニでその週刊文春を買い込んだ。

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マスコミといい関係を作れたこと

 お昼ご飯は、大阪地裁のそばにある「なにわ翁」というそば屋さん。としくんはここのおそばが好きで、二人でよく通った。二人ともいつも冷たいそばを食べてから温かいそばを食べた。でもこの日は一人前にしておいた。あまりお腹いっぱいになりすぎない方がいい。

赤木さんが会見席から俊夫さんの写真越しに撮影した記者会見場(撮影・赤木雅子さん)

 午後1時からの記者会見。報道各社の記者さん達を前に話した。

「この1年で一番変わったなと思うのは、マスコミの皆さんとすごくいい関係を作ることができたことです。とても怖いと感じていた1年前ですが、今は夫のことをたくさんの人に知らせて下さって感謝しています。一人でも多くの方に夫のことを知っていただいて二度とこんなことが起きないようにするためにも、報道のこと、よろしくお願いします」