常にナックルボーラーが存在するアメリカ
ウェイクフィールドと対面できたことはもちろん、吉田からすればアメリカという土壌はナックルを投げ込む上でも適していた。というのも古くはウェイクフィールドにナックルを伝授したニークロ兄弟や、2012年にサイ・ヤング賞を獲得したR・A・ディッキーなど、メジャーには名ナックルボーラーがいつの時代もおり、偏見というものがなかった。
実質的にナックルボーラーを輩出したことのない日本の球界であれば異端あつかいされる可能性もあるが、アメリカのおおらかな空気のなかでナックルに向き合えたのは吉田のキャリアにとって大きかった。
これからも完成を目指していきたい
NPBやメジャーを夢見た吉田だったが、残念ながらそれを果たすことはできなかった。しかしナックルボーラーとしてプロの世界で前例のない活躍をし、日米で爪痕を残したことは間違いない。
極端な話ではあるが今後、ナックルを完璧にマスターできたのであれば女性であってもNPBやメジャーで活躍することは可能だろうか?
吉田はしばらく黙考し、次のように答えた。
「私自身、それを達成することができなかったので勝負できるとは断言できません。ナックルは投げるばかりではなく、クイックやフィールディング、キャッチャーとの相性など、いろいろな課題があります。けれど、ウェイクフィールドさんのような理想的なナックルが投げられれば可能性はゼロではないと思います。私としてもまだまだ試行錯誤中ですし、これからも完成を目指していきたいですね」
飽くなき探求。中学生のときに出会って以来魅了され、扱いづらさではピカイチの“魔球”に添い遂げる吉田の野球人生は、これからもつづく。
撮影=末永裕樹/文藝春秋
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