元法務大臣の河井克行氏(58)が2021年3月23日、衆議院議員辞職の意向を示した。2019年7月の参院選で、地元議員ら計100名に2900万円もの現金を配ったとして、公職選挙法違反に問われていた。今までの無罪の主張を一転させ、河井氏は、現金を渡した目的について「(妻の)案里の当選を得たい気持ちが全くなかったとはいえない」と被告人質問で説明し、辞意を表明した。

 その一方、「すべてが買収目的であったことはございません」として、一部の事務所スタッフらへの現金提供については、争う姿勢を示した。

 操作の端緒となった「週刊文春」2019年11月7日号の記事を再公開する(日付、年齢、肩書きを掲載時のまま)。

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 2019年10月31日朝、河井克行法務大臣(56)が、辞任した。その日発売される「週刊文春」のウグイス嬢「違法買収」疑惑報道を受けての辞任劇だった。「週刊文春」では、河井氏と妻の河井案里参院議員(46)が7月の参院選で、ウグイス嬢に法定額1万5千円以上の報酬を支払っていたことを示す2枚に分けられた領収書や「1日3万円」が明記された“裏帳簿”の存在などを詳報している。

2枚に分けられたウグイス嬢の領収書

 克行氏は、辞任の理由を官邸の記者団に対し、「今回の一件は私も妻も全くあずかり知らない」と疑惑を否定した上で、「調査を行う間、法務行政への信頼は停止してしまう。妻と相談し、一晩じっくり考え、今朝決断した」などと、辞任理由を語った。

記者に説明する河井法相 ©時事通信社

 ただ、「全くあずかり知らない」という説明は、納得のいくものなのだろうか。改めて、「週刊文春」取材班が、自民党広島県連関係者や後援会関係者などに、克行氏、案里氏の事務所の実態を取材した。

克行氏が実質的な“選対本部長”だった

 まず、複数の関係者が口をそろえるのが、「克行氏が実質的な“選対本部長”だった」という点だ。

「公示前からしょっちゅう地元に帰ってきては案里氏の活動日程をすべて管理していました。今回は安倍晋三首相の地元・山口の事務所からもサポートのための秘書団が入っていましたが、その対応はもちろん、郵便配達を使ったポスティングまで、克行氏が細々と指示を出していました」(選対関係者)

河井案里氏 ©時事通信社

 克行氏は、案里事務所の金の差配もしていたという。

「案里氏が参院選立候補が決まった直後の今年4月に立ち上げた『自民党広島選挙区第7支部』の会計の管理は、克行氏自ら行っていました。(参院選立候補に必要な)供託金の用意をしたのも克行氏です。克行氏は通帳を毎日必ずチェックし、交通費や駐車場代など、数万円の細かな費用まで削減しようとしたことがあったほどです。13人のウグイス嬢全員分で合計100万円単位になる『日当3万円』の支払いについて、知らないはずがありません」(別の選対関係者)

ウグイス嬢の出勤日と1日3万円を掛けた額の支払いを示す“裏帳簿”

 克行氏がどのように事務所をマネジメントしていたのかを物語るエピソードはほかにもある。克行氏の事務所では、贈り物が届くたびに、克行氏が誰に配るかをこと細かに指示していたという。配布していたのは、既に報じたジャガイモに加えて、シャンパン、すだち1キロ詰めなど。克行氏は、「賞味期限」まで把握できるようにしていたという。

「(事務所の運営は)信頼できるスタッフにお願いしていた」(案里氏が発表したコメント)と、取材班がつかんだ河井事務所の実態には乖離がある。「説明責任を果たす」という河井夫妻の言葉の通りの行動が、求められる。

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