きょう3月24日は女優の綾瀬はるかの36歳の誕生日である。つい3日前には、主演ドラマ『天国と地獄~サイコな2人~』が最終回を迎えたばかりだ。また、先週金曜(3月19日)からは、2017年に主演したテレビドラマの劇場版である『奥様は、取り扱い注意』も公開されている。こちらは昨夏公開の予定がコロナ禍にともない延期となっていた。

綾瀬はるか ©文藝春秋

『天国と地獄』では、高橋一生演じる殺人鬼と人格が入れ替わる刑事という役どころだった。一方、劇場版『奥様は、取り扱い注意』はドラマ版と同じく元特殊工作員の専業主婦役ながら、本作では記憶喪失になったという設定で、綾瀬によれば、ほとんど別人を演じている気分だったという(※1)。いずれも、1つの役で2つの人格を演じ分けなければならず、演技派として知られる彼女にもかなりハードルが高かっただろう。

綾瀬に多かった“突飛な役どころ”

 2つの主演作品はまた、物語の前提となる設定が現実離れしている点でも共通する。思えば、綾瀬には初期からこうした突飛な役どころが多い。映画『僕の彼女はサイボーグ』(2008年)ではタイトルどおり、未来からやって来たサイボーグを、同年公開の『ICHI』では盲目の女旅芸人をそれぞれ演じた。ジャンルもSF、アクション、時代劇と問わず、コメディからシリアスな作品まで幅広くこなし、赤塚不二夫のマンガの実写版である映画『ひみつのアッコちゃん』(2012年)のアッコちゃんまで演じている。《彼女は聞いた方が一瞬「え?」と思うようなヘンな企画や役柄で成功している》とは作家の小林信彦の評だ(※2)。

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2012年の映画『ひみつのアッコちゃん』舞台挨拶にて ©文藝春秋

ホリプロの先輩・深田恭子との共通点と差異 

 突飛な役どころが多いという点では、綾瀬のホリプロの先輩である深田恭子とも重なる。ただ、深田がこうした役を演じると非現実性がより際立つのに対し、綾瀬の場合、どんなに現実離れした役を演じても、どこか日常と地続きというか普通っぽさを残している。

 綾瀬はまた、ときどきバラエティ番組に出演しては、持ち前の天然ボケで笑いを誘っている。これについては、本業での演技派ぶりとのギャップも感じるが、じつのところ、演じる彼女も、天然な彼女もまた地続きで、本質的に変わりはないのかもしれない。それが証拠に、綾瀬の演じる役には、一見きっちりしていても、どこか隙のある女性が少なくない。