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女優業以外でも幅広い活躍を見せる綾瀬

 女優業の一方で、ここ10年あまり、TBSの『NEWS23』を中心に、戦争経験者に話を聞き、若い世代に伝える仕事も続けてきた。綾瀬の祖母の姉が広島の原爆で亡くなっていることも、この仕事を引き受けるきっかけだったという。

 2015年暮れに綾瀬と対談したイギリスの小説家カズオ・イシグロは、自身もまた母親が長崎で原爆に遭っていることもあり、彼女がそうした仕事をしていると知って「非常に価値のあること」と評価した。

©文藝春秋

綾瀬はるかが演じる「いやな女」が見てみたい!

 イシグロとの対談は、綾瀬が彼の原作によるドラマ『わたしを離さないで』(2016年)に主演するのを前に熱望して実現にいたった。そこでは同作を中心にさまざまなことが話題にのぼり、対話はしだいに熱を帯びたという。終わりがけには綾瀬から《今日、こうして二時間近くお話をさせていただいた感触から、私が今後、どういった役柄を演じたら面白いと思われますか?》との質問も飛び出した。その後ノーベル文学賞も受賞する世界的な作家に、こんなことが訊けるのも“天然”のなせるわざだろうか。これに対し、イシグロからは、《全く正反対のタイプに見える役をやるのも時には面白い効果が出ます。だから、はるかさんが悪女的なファム・ファタール(運命の女)を演じると、面白いのではないでしょうか》といった答えが返ってきた(以上、※7)。

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「悪女的」といえば、『天国と地獄』で殺人鬼と人格が入れ替わった刑事役にはその片鱗がうかがえた。老若男女を問わず人気を集める綾瀬だが、今後はそれを逆手にとって、これ以上ないというほどいやな女を演じるのも見てみたいところではある。

2020年発売のフォトエッセイ『ハルカノイセカイ 02』(講談社)より

※1 劇場版『奥様は、取り扱い注意』パンフレット
※2 『文藝春秋』2017年7月号
※3 『週刊文春』2001年12月20日号
※4 『週刊文春』2006年10月19日号
※5 『週刊文春』2009年10月15日号
※6 『Document 2015-2018 綾瀬はるかフォトブック』(KADOKAWA、2018年)
※7 『文藝春秋』2016年2月号