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随所に感じる「隙の多さ」は綾瀬の魅力のひとつ

 ドラマでいえば、『ホタルノヒカリ』(2007年・10年)で演じた面倒くさがりで恋愛も放棄してしまった「干物女」をはじめ、『義母と娘のブルース』(2018年)で演じたバリバリの元キャリアウーマンも、結婚後は慣れない家事や子育てに苦心する。『天国と地獄』の女性刑事にしても、任務をきちんと果たそうとするあまり、「風紀委員」とあだ名されるほどの正義感がかえってピンチを招いたりと、まさに隙だらけだった。そうした役がまわってくるのはやはり彼女の資質に合っているからだろう。観ているほうも、バラエティでのイメージもあいまって、いつしか彼女にそういうキャラを求めるように刷り込まれてしまったのではないか。

©文藝春秋

 綾瀬の天然ボケは、『紅白歌合戦』で過去3度(2013・15・19年)、紅組司会者を務めたことで国民的に知られるようになった。司会のたびにセリフを噛んでも、視聴者からは批判の声よりチャーミングだと肯定的な反応が上回る。もちろん、女優としての実績がなければこうはならないのだろうが、隙の多さすらも魅力に見えてしまう天性のキャラによって許されているところも多分にあるはずだ。その意味において彼女はもはや、高座で寝てしまっても客席から「寝かしておいてやれ」と声がかかったという古今亭志ん生や、あるいはホームランを打ちながらホームベースを踏み忘れてふいにしたといった話までもが伝説として伝えられる長嶋茂雄などと同じ域に達しているのかもしれない。

もともとは「ダイエット企画挑戦経験」もあるグラドル

 いまでは日本を代表する女優との呼び声も高い綾瀬だが、デビュー当初はアイドルとして売り出され、グラビアやバラエティを中心に芸能活動を始めた。ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞した翌年、2001年には『週刊文春』巻頭の名物グラビア「原色美女図鑑」に初登場する。この年にはドラマ『金田一少年の事件簿』で女優デビューしているが、「美女図鑑」登場は『B.C.ビューティー・コロシアム』というバラエティ番組の企画で1ヵ月で7キロのダイエットに成功した“ご褒美”としてで、肩書も「水着アイドル」となっていた(※3)。

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2001年発売のファースト写真集『birth』(集英社)より

 もともと芸能界にさほど憧れはなく、スカウトキャラバンも友達の付き添いで出場したら合格してしまったのだという。郷里の広島から上京しても早く帰りたかったというのが本音で、女優の仕事に対してもあまり意欲を持てなかったらしい(※4)。それがドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)に出演したあたりから、しだいに演技に開眼する。同作では白血病にかかった少女を演じ、治療中の場面では頭を本当に丸坊主にした。