克行被告は実刑を免れないという見方も
ある広島県政関係者は「当選すると思っていたなら、なんで現金を配ってまわったのか」と憤る。
「事前の調査で案里元議員が、溝手氏、野党候補に次ぐ3位だった。逆転できた理由はカネだけではないとは思うが、当選すると思っていたならこのような罪は犯さなかったのではないか。今回の告白は、罪を少しでも軽くしたいだけに見える。議員辞職を表明したが、もらった側で辞めている人はすでにたくさんいる。遅すぎる決断だ」
元法相による、かつてない規模の買収事件。克行被告は実刑を免れないという見方も強まっている。前出の大手紙社会部記者が「永田町では計算され尽くした辞職だと言われています」と解説する。
「克行被告は法廷で議員辞職も表明しましたが、これも情状面で少しでも優位に進めたかったからでしょう。公選法の規定で3月15日までに辞職してしまうと、4月に広島3区で補選が行われてしまいます。公明党が後任の候補者を擁立することを自民党側も了承していますが、自民党への風当たりが強い現状、広島3区も4月補選に組み込むことは避けたかったのではないでしょうか」
すでに4月補選が決まっているのは東京地検特捜部に収賄罪で起訴された吉川貴盛元農相(辞職)の衆院北海道2区、新型コロナウイルスに感染し死亡した、立憲民主党・羽田雄一郎氏の参院長野選挙区、案里元議員の参院広島選挙区の3つ。北海道2区では、与党は候補者を出さない方針で不戦敗が確定し、残る2補選も与党にとって厳しい戦いとなるからだ。
河井被告が法廷で語った“自民党愛”に、永田町関係者は冷ややかな目を向けているのだ。一方で「不可解だ」とささやかれているのが“案里愛”なのだという。
法廷では妻・案里元議員への溢れるばかりの愛情も垣間見せる
「克行被告は案里元議員について『時代を先取りした問題意識』を持っており、『人を思いやる』性格で、『相手が誰でもひるまない』と事あるごとに語っています。言葉の端々に案里元議員への愛をにじませているんです。夫婦間に愛情があったからと言って罪が軽くなるわけではありませんし、国民の心証がよくなるとも思えません。国会議員関係者の間では『クサいヒロイズムだ』と冷笑されています」(同前)
克行被告が案里元議員に出会ったのは落選浪人中だ。科学技術振興事業団専務理事だった沖村憲樹元科学審議官の紹介で顔を合わせている。
「3月に行われた証人尋問に、沖村元科学審議官が出廷し、『紹介した日の夜に克行元大臣は、案里さんがカラオケで「天城越え」を歌うところを見て、結婚を決めた。紹介してよかった』と語っています。その後、2001年4月に広島市内のホテルで結婚式を挙げています」(同前)
2019年、案里元議員は「夕刊フジ」のインタビューでこう語っている。
「実際に政治家になったきっかけは、主人(=河井克行・自民党総裁外交特別補佐)と結婚して選挙のサポートを始めたことです。一緒に選挙区を回っていたら、主人から『君は政治に向いているよ』と県議選への出馬を勧められたのです」
計算づくめの「自民党愛」に、不可解な「案里愛」。判決期日の見通しはまだたっておらず、4月まで被告人質問が続くが、“克行劇場”はどのような終幕を迎えるのだろうか。