河井案里元参院議員(47)=公選法違反罪で有罪確定し失職=が初当選した2019年7月の参院選。河井元議員の夫である元法相の河井克行被告(58)が、地元政治家や後援会など計100人に現金2900万円を配ったとして、妻と同罪に問われていた。河井被告は2020年8月に行われた初公判で無罪を主張していたため、このまま法廷闘争は泥沼化すると見られていたが――。
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報道陣に冗談を言いながら法廷へ
3月23日午前9時半前、克行被告は報道各社の要請に応じ法廷に向かう姿を撮影されていた。大手紙社会部記者はその様子をこう話す。
「議員バッジを左胸に光らせ、元検事の有名弁護士を率いて、ゆうゆうと報道陣の前を歩いていきました。単に格好よく見せたいだけなのかもしれませんが、克行被告は『もう1回やろうか』と報道陣に冗談を言うほどの余裕を見せていました」
10時に開廷し、すぐに弁護側の被告人質問が始まった。克行被告の主張は従来通りだった。
「妻と共謀した事実はない」
「陣営関係者(スタッフ)に差し上げたお金は買収ではない」
しかし突如その主張を一転させ、大部分の買収を認めだしたのだ。弁護人が「講演会関係者や地元議員に対する現金供与も公訴事実に含まれている」と話すと、克行被告はこう答えた。
「後援会の役員や、地方議員、首長にお金を渡した」
「妻、河井案里の当選を得たいという気持ちがまったくなかったとはいえない」
「全体的に買収罪ということについては争うことはしない」
昨年8月の初公判以来、約7カ月ぶりの発言。その内容が注目される中で起きた想定外の「告白」劇だった。
「事前に辞職意向の報道もあり、ある程度予測はされていましたが、ここまで明確に白旗を上げるとは想像以上でした。政治家は選挙で選んでもらった手前、罪を犯しても認めずに最後まで争うケースが多いので、意外に感じた人は多かったのではないでしょうか」(同前)
8月の初公判以降、弁護人を解任して一時中断したこともあったが、100人の現金を受け取った地方議員や後援会関係者らの証人尋問や、供述調書の朗読にじっと耳を傾けてきた克行被告。時には証人として出廷していた女性秘書が検察官とアイコンタクトをしていたことに声を荒げて、裁判長から制止されることもあった。
なぜ一転して罪を認めたのか。