浮気調査や人探しといった本業のかたわら、子供たちの「いじめ調査」を続けているT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚氏。年間約500件もの相談を受けて、いじめ事件の解決に奔走するうちに、いつしか「いじめ探偵」と呼ばれるようになった。これまでに阿部氏が手がけた事件の中から、とくに印象的だった事例について話を聞いた(プライバシーの観点から仮名にして一部フィクションを交えています)。
阿部氏が原案・シナリオ協力をつとめる漫画『いじめ探偵』(漫画・榎屋克優)が現在、WEB漫画サイト「やわらかスピリッツ」にて連載中。
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絵に描いたような優等生が
関東地方の中堅公立校に通う高校1年のハルカ(17歳・仮名)は、入学当初から成績優秀で、教師たちからも一目置かれる存在だった。新体操部ではエースを務め、明るく活発な性格が男子からも女子からも好かれていた。
「一言で言えば、キラキラした感じの子でした。家柄もいいし、見た目も美人で友達の多いタイプ。でも、だからこそ嫉妬されたんでしょうね」(阿部、以下同)
ある日、ハルカが普段通り登校すると、教室の空気が変わっていた。友達から無視をされたり、男子から机に蹴りを入れられたりするようになった。部活でも次第に孤立していった。
「いじめの原因は、ツイッターでした。ハルカになりすました偽のアカウントを誰かが作り、偽のツイートを流していたのです」
ハルカはもともと、インスタグラムやツイッターなどのSNSをよく使っていて、日常の些細なことをつぶやいていた。
「わりと裕福な家庭だったので、家族でハワイ旅行に行った様子や、沖縄にソーキそばを食べに行ったときの写真などをアップしていました。ほかには、自分の誕生日パーティーをカラオケボックスで開いて、友達が20人ぐらい集まっていたりとか。タピオカドリンクの写真もあったし、男女混合のグループでホテルのナイトプールで遊んだりもしていました」
偽の裏アカが吐き出す“本音”
偽のアカウントは、ハルカのツイッターやインスタグラムから勝手に本人の画像を抜き取り、ハルカになりすましてツイッターを始めたのだ。友人たちから見たら、ハルカが裏アカを始めたように見える。偽ハルカのアカウントのツイッターには鍵がかかっていたが、友人たちからフォローされると、フォローバックしてツイートを見られるようにした。
偽の裏アカがツイートしている内容は、ひどいものだった。たとえば、ハルカが友人たちとファミレスでランチをした直後に、こんなことをつぶやく。
〈なんの肉か分かんない。これ食って喜んでいる人間は舌がおかしい〉
友人たちから見たら、さっきまで楽しくランチをしていたつもりが、ハルカは心の中では自分たちをバカにしていたのだと勘違いする。
〈みんなバカすぎて授業が進まない。バカと一緒だとつまらない〉
〈デブは自己管理できない人間。ダイエットしろ〉
〈カラオケ行くとき、みんな安い店行くから合わせているけど、本当は行きたくない〉
〈ハンデキャップのある子の手助けするのは、教師ウケ狙ってやってんだよねー〉