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黒田博樹も新井貴浩もここで育った…カープ「由宇練習場」の物語

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/04/09

 あらゆる人を育てる場所である。あの黒田博樹投手も、新井貴浩選手も、このグラウンドでユニフォームを真っ黒にして、球界を代表する選手に成長を遂げていった。

 広島地区でレギュラー番組6本を抱える人気芸人になったボールボーイ佐竹も、その一人である。「カープ芸人も育成される場です。トークライブを由宇練習場の話題だけでやり切ったことがあるくらいです。グラウンドに向かう道中までもがコンテンツ(ネタ)になる練習場です。由宇に行かずして、カープ芸人は語れません」。

 実際、ボールボーイ佐竹も、芸人仲間と車を乗り合わせ、由宇練習場には足しげく通ってきた。「はい。高速道路の料金を抑えるため、ギリギリまで国道を走って、必要最小限だけの高速道を利用とか。休憩を含めての1時間半には、いろんな思い出があります」。

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カープ芸人・ボールボーイ佐竹(左)と筆者 ©坂上俊次

由宇練習場には物語が詰まっている

 さて、本題の野球である。由宇練習場は山口県岩国市に位置する。広島市内から車で約1時間半近くの距離である。JR山陽本線・由宇駅からも、車で15分。由宇の緑を抜け、山を登った先に切り拓かれたのが、カープ2軍の本拠地だ。

 両翼100メートル、センター122メートル。周囲は緑に囲まれ、日差しを遮るものは、何もない。しかも、改修前までは本塁からバックネットまでが25メートルあったというのだから、そのスケール感には驚きである。今でも、そのファウルグラウンドはマツダスタジアムや甲子園球場以上の広さを誇る。

 この練習場の強みを知り尽くすのが、高信二2軍監督である。「広い球場ですから、しっかりとバットを振らないとスタンドインはできません。みんながホームランを狙うわけではありませんが、しっかりスイングする意識は大事です」。

 広いグランドは、選手のスケールを大きくし、同時に基本の大事さも教えてくれる。「広いグラウンドで遠投をすることで、体を大きく使うことができる。それにファウルグラウンドが広いので、カバーリングの重要性も確認できます」(菊地原毅2軍投手コーチ)。 

 コロナ禍だ。由宇練習場は無観客での試合開催が続いている。観客席に椅子こそないが、例年だと、由宇に通いなれたファンは、マイチェアやマイテントを持ち込み、鮮やかな芝の上から若ゴイに熱視線を送る。

 今、この観客スペースの外周を、選手たちはランニングに活用することがある。600メートル程度の不整地は、選手の土台を培う格好のランニングコースである。

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