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大洋ファンとラジオと……電波を探してダイヤルを回していたあの頃と今

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/04/10
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当時の不人気カードはどうしていたか?

 では、当時の不人気カード、神宮でのヤクルト戦はどうしていたか? これが意外と頻繁にラジオで聴くことができた。それもキー局のダイヤル1242、ニッポン放送ショウアップナイターで。

 昨今のショウアップナイターは巨人戦中継がメインだが、当時ニッポン放送には巨人主催試合の放送権がなく、代わりに大洋とヤクルトの主催試合のラジオ独占放送権を持っていた。ゆえに巨人が後楽園や東京ドームで試合していて、裏で神宮のヤクルト-大洋戦があると、最下位争いにも関わらず神宮の三連戦を中継してくれるのだ。ヤクルトに強い遠藤一彦の頼もしい様を、何度ラジオ越しに堪能しただろうか。

 同じ理由で、ニッポン放送は横浜スタジアムの試合もよく中継してくれた。大洋の監督をしていた関根潤三さんがショウアップナイター放送開始時の1966年から長らく解説を務めており、名物アナウンサー・深澤弘アナとのコンビは子供にもわかりやすく、ホエールズに対してやや好意的なこともあって聴き心地がよかった。80年代のショウアップナイターは筆者にホエールズと野球のことを詳しく教えてくれる先生のような存在だった。

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 ニッポン放送が横浜での中継権を持っていたのは、横浜移転時に同局が球団の株式を獲得したこともあったのだろう。球団発行誌『ファンマガジン横浜大洋』や『月刊ホエールズ』には毎号「ニッポン放送のページ」が掲載されていたし、80年代のニッポン放送は朝からたいへーんの塚越孝アナ、笑顔でこんにちはの名司会者・玉置宏さん、オールナイトニッポン第二部のシンガーソングライター・谷山浩子さんと、熱烈大洋ファンのパーソナリティーが揃っていたのも思い出深い。

『ファンマガジン横浜大洋』27号(1984年)に載った関根潤三監督と田代富雄選手によるニッポン放送30周年メッセージ ©黒田創

 そんな昔話を、ABCラジオの横浜DeNA-阪神戦を聴きながら書いていたら佐藤輝明のどデカい一発が飛び出して今日は敗色濃厚である。解説は大矢明彦さんだが、さすがの大矢さんもABCラジオだと阪神目線の解説をしているのがわかる。ラジオ中継はいろんな視点を与えてくれるのだ。

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