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レギュラー3人を欠いても善戦

 翻って2021年。スアレス、山野、山田、西浦は濃厚接触者に該当せず、山田と西浦は4月1日にスタメン復帰(山野はプロ初先発)。ただし、青木と内川に加え、3月30日の試合で代打として決勝打を放った川端も新たに濃厚接触者として特定され、4月13日までの自宅隔離が決まった。開幕3戦目に自打球を右ヒザ付近に受けた坂口も登録を抹消されており、ヤクルトの野手陣は今、レギュラー3人と代打の切り札を欠いた状態にある。

 だが、そんな2021年版の下町スワローズも善戦を続けている。4月2日の巨人戦(東京ドーム)からは先発が5試合連続で2失点以下に抑えるなど、投手陣の踏ん張りが大きいが、ここまで勝率5割で単独3位につけている。

「(雰囲気は)変わりましたね。むしろ良くなったというか、ホントにみんな勝ちたいという思いでやっている。気持ちで変わる世界ではないかもしれないですけど、みんなモチベーションは一人一人高めてやってると思います」

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 4月7日の広島戦(神宮)を前に、チームの状況についてそう語ったのは、今年からキャプテンに就任した山田である。その日の試合では6年目の山崎が決勝タイムリーを打ち、お立ち台で「今、坂口さんもケガしてますけども、自分にとっては大きなチャンスだと思うんで、そこをしっかり逃さないように、毎日アピールしていきたいと思っています」と話すと、翌日の同カードでは今季初アーチを含む4安打、2打点と猛アピールを続けている。

7日の広島戦で決勝タイムリーを放った山崎晃大朗

奥川にプロ入り初勝利をプレゼント

 7日の試合では、8番・右翼で今季2度目のスタメン出場の渡邉大樹(23歳)が2回にギリギリのダイビングキャッチで投手を盛り立てると、7回には山崎の右前打で自慢の快足を飛ばし、二塁から一気に生還。続く8日の試合ではその渡邉に代わって右翼で先発した太田が、初回に1点差に詰め寄る犠飛を放ち、3回には育成出身の松本友(26歳)が決勝タイムリーで、2年目の奥川恭伸にプロ初勝利をプレゼントした(渡邉はその後、4月9日付で登録抹消)。

「チームの状況がどうこうとかじゃなく、自分が生き抜くのに必死になってほしい。そういう野心を持った選手が、1人でも多くなってほしいなと思います」

 昨シーズン終盤、キャプテンの青木(今季から終身名誉キャプテン)はチームの若手選手について、そう話していたことがある。その青木らの不在に加え、新型コロナウイルスによる入国制限の影響で新外国人の来日が遅れ、今も2週間の隔離期間中という中で、若手がここぞとばかりに野心をむき出しにしているように見える。

「ギラギラしてやらないと」

「ギラギラしてやらないとね、彼らは。楽しむ余裕はないかもしれないですけども、全力でボールを追いかけて、全力でスイングして、その結果がどうかっていうところを我々が評価し、自分で反省し、成功を求めてやっていかなきゃいけない立場だと思うので。少々の失敗は目をつぶるつもりですし、それで良い結果が出てくるとよりいいですしね。そういう状況で彼らが一生懸命、頑張ってるのかなと思います」

 高津臣吾監督は2021年版・下町スワローズをそう評するが、これから青木らの自宅隔離が終了し、さらに隔離期間の明けた新外国人が調整期間を経て合流してくれば、彼らも次々にふるいにかけられることになるだろう。

 39歳になっても衰え知らずの青木や、新天地で5番にピタリとハマった内川、それに代打の切り札として完全復活を目指す川端の復帰は、もちろん待ち遠しい。元祖・下町スワローズのリーダーだった坂口にも、1日も早く元気な姿で戻ってきてほしい。その一方で、生き残りをかけて奮闘する「下町スワローズ2021」のひたむきなプレーも、もっと見ていたい──。今、筆者の心にはそんなアンビバレントな感情が渦巻いている。

 ※文中敬称略。年齢は日付時点、年俸はいずれも推定

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