文春オンライン

“田中将大vs大将中田” 少年みたいな中田翔を僕らは久しぶりに見た

文春野球コラム ペナントレース2021

note

あんな少年みたいな中田翔を僕ら久しぶりに見たんだ

 と思ったら1番、西川遥輝が強い高めの球で空振り三振に取られた。初球、スライダーで機先を制し、そこからまっすぐで内懐をえぐって意識づけ、あとは外と高めの釣り球2つ。うわ、強いピッチングするなぁ。見ていて寒気がした。ボールが違うとか、ケガ明けのぶっつけとか関係ないかもしれない。それくらい説得力のある三振だった。田中将大が確かに帰ってきた!

 続く2番、渡邉諒はセンターへ抜けそうなゴロをショート小深田に処理されて2アウト。と、そこから田中将大のまっすぐが抜け始めた。3番、近藤健介には押さえがきかず、ストレートの四球。2死走者1塁でバッターは4番、中田翔。今季ここまで絶不調だ。不振をかこつファイターズ打線の象徴。

 ちなみに中田は今年2月20日、沖縄・金武で行われた練習試合で、スライダーをうまくバットに乗せて、田中からホームランを放っている。まぁ、アメリカじゃそんな早い時期に投げないそうだから参考にもならないかなぁ。楽天バッテリーの攻めは西川の組み立てに似ていた。スライダーで入り、まっすぐで内懐をえぐる。中田は押し込まれて捕邪飛を打ち上げる。これを太田光が見失ってファウル(太田の後方にボールがポトリと落ちる)。命拾いした中田は打ち直しだ。これがアヤになった。中田はかつてのファイターズの本拠地、東京ドーム名物「デーゲームのドーム落球」に救われた格好。

ADVERTISEMENT

 バッテリーは変化球で三振を取りにくるが、中田がしぶとくかわす。そして、カウント1‐2からの5球目だ。インコース要求のまっすぐが真ん中高めに浮いた。

 中田翔が文字通り「しばく」。

 金武の練習試合みたいな「バットにうまく乗っけて運んだ」当たりじゃなく、ガツンと叩いた会心の一撃! 打球は左中間スタンドに一直線。お待たせの今季第1号は田中将大NPB復帰を寿ぐ祝砲一発! これが「田中将大vs大将中田」。僕らが胸躍らせた、回文みたいな名勝負ってわけなんだ。

田中将大から今季第1号を放った中田翔

「大将中田」はその後、6回にもメジャー帰りの牧田和久から2号ソロを放ち、すっかりお目覚めのご様子だった。投げてはエース上沢が7回を3安打1失点に抑え、投打の主役が揃った快勝劇だ。ファイターズはこれを「第二開幕」だと思って頑張ってほしい。

 そして、田中将大! 今季、パの打者はこの調子だと思う。「包囲網」とか何とかじゃなしに、皆、打席に向かうのが心底楽しそうなんだ。あれだけ元気なかったファイターズ打線が火を噴いた。それは田中将大が田中将大だからだ。ホームランを打って、ベンチに戻った中田がずっとニヤけていたのを思い出す。あんな少年みたいな中田翔を僕ら久しぶりに見たんだ。

しゃあああ! やったぜ大将中田!! ダイヤモンド一周して、ガッツポーズですー。 ©えのきどいちろう

 追記、文中、大いに褒めた今川優馬は残念ながら第2戦の出番をもらえず、田中将大と対戦が叶わなかった。この試合で僕が儲けたなぁと思うのは石井一成だ。石井ピンちゃんは「7番サード」でスタメン起用してもらった。野村佑希がケガして、更に樋口龍之介が死球で離脱しなかったらサードスタメンはなかったはずだ。しかも、2回にはライトにホームランを放っている。ピンちゃん、よかったなぁ。田中将大からホームランだよ、一生記録残るよ。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2021」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/44423 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

“田中将大vs大将中田” 少年みたいな中田翔を僕らは久しぶりに見た

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!