小池百合子 東京都知事、希望の党代表
「私は最初から出馬しないと言っている。(出馬の可能性は)100%ない」
読売新聞 10月3日
名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。今週もこの人の動向が注目を集め続けた。希望の党代表の小池百合子都知事だ。
小池氏は読売新聞の取材に対し、衆院選に出馬しないことをあらためて明言した。2日に読売新聞のインタビューで「100%ない」と答え、3日に第1次公認候補を発表した際も「100%ない」と否定した(時事ドットコムニュース 10月3日)。5日に行われた民進党の前原誠司代表との会談の後も、記者団に対して「冒頭から立候補は考えてない」と答えている(NHK NEWS WEB 10月5日)。
BuzzFeed JAPANは、「最初から出馬しないと言っている」と述べた小池氏のこれまでの発言をチェックし、この発言が不正確であることを証明した(10月5日)。9月20日、報道陣から衆院選出馬の可能性を問われた際は「いろいろな想定外、想定内がある」と含みを持たせている。また、9月25日に希望の党の結成を表明した際も、「国政に挑むことは一切ないのか」と問われているにもかかわらず、はっきりと否定をしなかった。その間に世論を見極めて「100%ない」という結論に至ったのだろうか。『週刊新潮』は「最後の最後に名乗りを上げることで、世間をアッと沸かせてから、選挙戦に突入する」のではないかという政治部デスクの声を紹介している(10月12日号)。
自らの出馬について否定した小池氏だが、安倍晋三首相とは対決姿勢をむき出しにしている。5日の前原氏との会談では「『安倍1強』をどうやって倒していくか。改めて連携を確認した」という(産経ニュース 10月5日)。『週刊文春』の取材に対しては「“安倍ファースト解散”です。国民目線とは言えない。到底許せるものではありません」「政権をとるためだったら何でも良いのは自民党ですよ。野合という言葉はそっくり安倍さんにお返ししたいですね」(10月12日号)と、安倍首相への痛烈な批判を繰り返した。
一方、衆院選で安倍首相を退陣に追い込んだ後は、自民党との連立も視野に入れていることを匂わせている。あくまでも敵は自民党ではなく安倍政権だということらしい。小池氏が自民党の石破茂元幹事長を首相に担ぐという憶測も流れているという(毎日新聞 10月6日)。当の石破氏は小池氏について「国家に対する考え方に差はない」(産経ニュース 10月1日)、「天才です。リスクを恐れない」(日刊スポーツ 10月5日)と、安倍首相への辛辣な発言ぶりとは打って変わってシンパシーを隠さない。
土壇場でこれまでの発言をひっくり返し、自ら出馬して総理大臣の椅子を狙うのか? それとも安倍首相を退陣に追い込んだ後、石破氏と組んで自民党と連立するのか? こうやって考えさせること自体、小池氏の術中にはまっているのだろう。それは次の発言を見ればわかる。
◆
小池百合子 東京都知事、希望の党代表
「選挙はテレビがやってくれるのよ」
朝日新聞デジタル 10月5日
希望の党から比例区で出馬する中山成彬元文部科学相に、小池氏が希望の党の衆院選の進め方について語った言葉。ちなみに中山氏は同党候補者の「思想チェック」を担当している。中山氏は南京事件を否定し、従軍慰安婦についての日本軍・日本政府の責任を認めていない。原発は推進派だ(毎日新聞 第47回衆院選候補者アンケート)。あれ? 希望の党の公約は「原発ゼロ」では?
ライターの武田砂鉄氏は、安倍首相がFacebookを、橋下徹前大阪市長がTwitterを意識しているのに対し、「小池は徹底的にテレビを意識している」と指摘している(cakes 10月4日)。国政進出に関して煙に巻いていたのも、テレビのワイドショーの注目を集め続けるためだったのだ。
「朝から晩までテレビを賑わせることに最大の価値を置く」「テレビに『氾濫』することが政治家の力量だと思っている節がある」という武田氏の指摘は、「選挙はテレビがやってくれるのよ」という小池氏の発言と見事に符合する。「しがらみのない政治」「消費増税凍結」「原発ゼロ」というシンプルなキャッチフレーズを多用するのもテレビで注目を集めるため。かつて「ダイバーシティ(多様性)」を強調していたのもテレビ対策に過ぎなかった。希望の党は政策協定書に堂々と「外国人への地方参政権付与反対」を打ち出している。
小池氏の「最大の応援団」は主婦たちだ。小池氏が出馬した昨夏の都知事選は投票率が約60%で前回を14ポイント上回ったが、その上積み分のほとんどが25歳から70歳の主婦だった(『週刊新潮』10月12日号)。彼女たちは、そのままワイドショーの視聴者層にあてはまる。小池氏はそのことをよく理解しているのだろう。
しかし、このまま小池氏の目論見どおりに選挙が進むとは思えない。都知事選では小池氏に声援をおくっていたという作家の林真理子氏も「今回はちょっとなあ」と正直な感想を漏らしている(『週刊文春』10月12日号)。林氏は小池氏をこう評している。「これほど人々の心を操れる人がいるだろうか。これほど堂々と嘘がつける人がいるか」。