JR上野駅11・12番ホームに、厨房のない駅そば屋がある。「セルフ駅そば」だ。店員は常駐しておらず、デジタル式のそば自販機から注文するだけ。まさに駅そばの常識をひっくり返す存在と言えるだろう。

 5つあるメニューのうち「たぬきそば」を注文。その味は想像以上のクオリティーだったが……。駅そば研究者・鈴木弘毅氏の書籍『「駅そば」から広がるそば巡り』(交通新聞社)より、一部を抜粋して紹介する。(全4回の2回目/最初から読む

「セルフ駅そば」の自販機。丼ごと解凍するので、提供時には丼も熱くなっている。火傷に注意(著者撮影)

※店舗情報・価格・サービス内容等は取材時点のものです。

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オーダーから90秒…その味は?

 オーダーから商品ができあがるまでの時間は、90秒ほど。急速といっても解凍するのだから、それなりに時間はかかる。客の回転が速いホームの駅そばとしては、90秒という時間は少し長いようにも感じる。レトロ自販機の調理時間が30秒ほどだったことを考えると、まだまだ改良の余地がありそうだ。

 反面、できあがったそばの再現性、つまりクオリティーは、レトロ自販機をはるかにしのぐものだった。有人店舗で食べる駅そばと比較しても、大きな遜色はない。レトロ自販機では、麺が丼の中にセットされた状態で自販機内に保管されるため、麺同士がくっついて団子状になりやすい。遠心分離で行う湯通しでは麺をしっかりほぐすことが難しく、丼全体の一体感を再現しきれないというデメリットがある。冷凍からの急速解凍技術によって、この点は大きく進化している。

味覚面に大きな問題はない。たぬききつねそばは予想を上回るクオリティだった(著者撮影)

 超えなければならない課題は、ふたつ残されているように感じた。ひとつは、価格面。現状では、平均的な駅そばに比べてかなり割高な設定になっており、廉価が売りの駅そばとしては改善を望む声が多くなりそうだ。新たに世に出るものは、価格が高く設定される。これは仕方のないこと。今後普及が進んで製造ロットが大きくなり、サプライチェーンが確立されれば、近い将来には落ち着いてくる可能性もある。