駅の近くにあるそば屋は「駅そば」。では、バスターミナルの近くにあるそば屋はどうか? 鈴木弘毅氏の書籍『「駅そば」から広がるそば巡り』(交通新聞社)は、鉄道駅のみならず交通ターミナルそばのそば屋を取り上げた、ユニークな一冊だ。
鈴木氏が訪れたのは、鉄道のない地域として知られる沖縄県。そこで出会った「バスターミナルそば」の一杯とは? 以下、同書より一部を抜粋して紹介する。(全4回の3回目/つづきを読む)
※店舗情報・価格・サービス内容等は取材時点のものです。
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戦前の沖縄には「駅そば」があった?
戦前には沖縄にも軽便鉄道が走っていた。そして、どうやらこの時代には那覇駅に駅そばが存在していたようである。米軍嘉手納基地の向かいにある道の駅「かでな」の展示資料のなかに、
「(軽便鉄道の運賃は)嘉手納と那覇は往復44銭。俺たちは50銭を握りしめて切符を買った。残りの6銭でソバを食って、飴を買って帰るのが定番の遊び方だ」
という沖縄戦経験者の証言記録があるのだ。
沖縄戦で軽便鉄道は壊滅的な被害を受け、そのまま廃止となる。以来、2003年にゆいレールが開業するまでは、沖縄県内の公共交通はバスをはじめとする自動車頼みだった。そのため、バス文化はたいへん発達しており、ターミナル施設も県内各地にある。そして、小規模なターミナルであっても、沖縄そばやラーメン、定食などを提供する飲食店が併設されていることが多い。
地元民に愛されるバスターミナルの食堂
本書では、那覇バスの新川営業所をピックアップしてみよう。那覇市の隣にある南風原町。その中心市街地から丘を登ったところに新川営業所がある。周囲には沖縄県公文書館や沖縄県立南部医療センターなど敷地の広い施設があり、比較的ゆったりしているように感じる街並みである。営業所にはバス車両の車庫や整備場があるほか、事務所とは別棟になったバス待合所も完備している。
市街地から外れた場所にあり、一般車両は敷地内に入ることができない。ということは、事務所の建物内で営業する沖縄そばをメインに提供する飲食店「ターミナル食堂」の利用者は、那覇バスの従業員かバスの乗客ということになるだろう。あるいは、医療センターや公文書館の職員や来訪者も利用しているかもしれない。いずれにしても、食堂を併設していることが意外に感じられる立地なのである。これだけ見ても、いかに沖縄のバス文化が発達しているかがうかがい知れる。
