駅の近くにあるそば屋は「駅そば」。では、バスターミナルの近くにあるそば屋はどうか? 鈴木弘毅氏の書籍『「駅そば」から広がるそば巡り』(交通新聞社)は、鉄道駅のみならず交通ターミナルそばのそば屋を取り上げた、ユニークな一冊だ。
沖縄県を訪れた鈴木氏が向かったのは、那覇市の隣・南風原町のバスターミナル「新川営業所」内にある、その名も「ターミナル食堂」。沖縄そばをメインに提供するこの店で、鈴木氏の目に飛び込んできたのは——。以下、同書より一部を抜粋して紹介する。(全4回の4回目/最初から読む)
※店舗情報・価格・サービス内容等は取材時点のものです。
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シイタケがまるごとひとつ、拳骨大の豚骨のサービス
三枚肉そばは、沖縄そばを提供する飲食店ならまず間違いなくラインナップされているメニューだ。駅そばに例えれば、天ぷらそばに相当するだろうか。定番中の定番である。豚の三枚肉(バラ肉)を甘辛く煮たものをトッピングする。メニュー名が「沖縄そば」となっている場合は、実質的には三枚肉そばである場合が多い。
ところが、運ばれてきた三枚肉そばは、なんとも異様なルックスのものだった。厚切りの三枚肉が2枚トッピングされているのは問題ないのだが、そのほかにシイタケがまるごとひとつ、そして拳骨大の豚骨がドカッとのせられていた。このビジュアルの三枚肉そばは、他店ではちょっとお目にかかれない。
ただ、私にはすぐに分かった。豚骨もシイタケも、スープの出汁を取る際に使った食材だ。シイタケはもちろん食べられるし、豚骨にも食べられる肉が少なからず残っている。食べずに捨ててしまうのはもったいない。
「食べてくれそうなお客さんには、のせるようにしているんです」
と店主。ということは、私は食べるように見えたということか。
駅そばの世界にも、これと似たサービスを行う店がある。出汁に使った削り節は、乾燥させてからフードプロセッサーにかければ、ごはんもののふりかけになる。出汁昆布も、細切りにすれば立派なトッピングに。形が崩れないシイタケにいたっては、甘辛く煮ればお金を取れる食材に再生できる。フードロスを減らすと同時に、捨てるくらいならぜひ食べたいという客にとってはたいへんありがたいサービスである。店側には生ごみを減らせるメリットがあるし、客も得をした気分になれる、両者の利害が合致したサービスなのである。

